“渋滞地獄”だった90年代
読売新聞の指摘にもあるように、90年代は「車両台数と道路環境のギャップ」が顕著であり、現在では考えられないような規模の渋滞が頻発していた。1995年8月12日にも、130kmに迫る長大な渋滞が起き、大きな混乱を招いている。中国道下り線、福崎IC付近(兵庫県)から名神高速の竜王IC付近(滋賀県)にかけて発生した129.7kmの渋滞である。
こちらの原因は明確であり、同年1月17日に起きた阪神淡路大震災の影響により、阪神高速が一部不通となっていたことが主な原因と見られる。当時はまだ山陽道も全線開通しておらず、京阪神から西に向かう際のルートが中国道に限定された結果、キャパシティを著しくオーバーしてしまった。
しかし1990年の渋滞と同様、当時の報道ではこの渋滞もそれほど「イレギュラーな事態」としては扱われていない。渋滞の影響を被った象徴的なケースとして報道されたのはやはり甲子園であり、東京都代表の帝京高校応援団が移動に19時間を要し、その日の最終試合にどうにか間に合ったことが朝日新聞や読売新聞で言及されている。
実際のところ、同日における他の高速道路の状況を見れば、この渋滞がそこまでイレギュラーなものではなかったことが読み取れる。毎日新聞東京本社版12日夕刊によると、同日の午前中、東北道下りでは福島飯坂IC(福島県)を先頭に117km、矢板北PA(栃木県)付近で81km、関越道下りの渋川伊香保IC(群馬県)で70kmと、各地で信じがたい規模の渋滞が発生していた。
現在の渋滞長は短くなっているが…
ちなみに期間をお盆に限定しない場合、日本の記録に残っているなかでもっとも長い渋滞は、なんと154km。1995年12月27日、名神高速下り線の秦荘PA付近(滋賀県、現在の湖東三山PA)から東名高速の赤塚PA付近(愛知県)にかけて、大雪の影響で著しく交通が停滞した。
なおこの翌年には、渋滞情報や規制情報をカーナビに届ける「道路交通情報通信システム(VICS)」が開始され、2001年にはETCサービスがスタート。さらに現在では、高速道路網が30年前に比べて約2倍の総延長にまで拡充されており、特定路線への集中傾向も緩和されている。
実際に、ここ10年ほどのお盆期間の渋滞記録を遡ってみると、例年もっとも長い渋滞で50km前後。通信技術を中心としたテクノロジーの進歩と、インフラの整備によって、90年代のような渋滞は見られなくなっている。
一方で、世に出回る車両の台数は年々増加しつづけており、渋滞損失時間(渋滞によって人々がどのくらい時間をロスしているかを示す指標)も近年上昇傾向にある。
100km超の大渋滞に遭遇する可能性は薄そうだが、今後も「渋滞のイライラ」に悩まされることには変わりなさそうだ。長期連休の際はなるべく事前に渋滞情報を確認し、ピーク時間をズラすなどの対策を講じておきたい。
