連日の酷暑を耐えてようやく迎えたお盆休み、帰省にレジャーにと、普段は行けない場所へのお出かけを待ち望む人は多いだろう。しかし車での長距離移動と切っても切り離せないのが、高速道路の渋滞だ。

 楽しみにしていた予定が大幅に狂うだけでなく、「車内の険悪ムード」や「トイレ問題」など、ストレスフルな状況に陥ることも少なくない。今回は「渋滞にまつわるトラブル」に焦点をあて、「こんなはずではなかった」という人々のエピソードを紹介する。

渋滞中に夫婦喧嘩、夫がまさかの「運転放棄」

 ストレスの大きな渋滞中の車内では、乗員同士の雰囲気も悪くなりやすい。とくに日頃から互いに不満を溜めている夫婦の場合、ちょっとしたすれ違いが「決定的な亀裂」を生じさせることもあるようだ。

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 数年前のお盆休み、夫婦で海辺の音楽フェスに向かった30代の小林さん(仮名)は、夫の横暴な振る舞いに辟易した経験を話してくれた。

「もともとの予定では朝7時に出発し、開演時間の9時頃には到着する予定だったんです。一番好きなアーティストが出演するのは午後からでしたが、夫婦ともフェスに行くのは初めてだったので、雰囲気を楽しみたくて。

 でも当日、家を出てしばらくしてから夫が忘れ物に気づき、高速に乗るのがかなり遅れて……。案の定、思い切り渋滞にハマってしまったんですよ。なのに、なぜか夫の方がだんだん不機嫌になっていき、『これだからお盆はイヤだったんだよ』と、舌打ちを連発していました。

写真はイメージ ©︎Tomoharu_photography/イメージマート

 雰囲気が最悪のまま、高速を降りたのは11時近く。しかも、会場が海水浴場と隣接していることもあり、下道も全然動かず……。あと3キロほどの地点から、ほとんど進まなくなってしまったんです。

 さすがに焦りはじめ、『もうこの辺の駐車場に止めて歩こう』と提案したのですが、『暑いなか往復1時間以上も歩けない』と取り合ってくれません。

 しばらくお互い無言のままピリピリした空気で、思わず私が『全然進まないね』と口にした途端、夫がいきなり『うるせぇな!』と怒鳴ってきたんです。さすがに私も我慢の限界で、『うるさいのはどっち? てか誰のせいだよ!』と叫んでしまいました。

 夫は大きな溜め息をついたあと、『もういいわ』と、あろうことか運転席から降りてしまったんです。慌てて『どこ行くの』と聞きましたが、無視して車とは反対の方向に……。

 呆気にとられながらも、とにかく運転席に乗り込んで。『もう意地でもフェスには行ってやる』と、コインパを探して止めて、会場まで30分くらい走りましたね。汗だくでゼェゼェいいながらも、どうにか目当ての歌には間に合いました。

 家に帰ると、夫はぐっすりベッドで寝ていて、サーッと気持ちが冷めていくのを感じましたね。次の日には一応謝られ、欲しかったブランド品なんかも買ってもらったので、形として和解はしましたが……。正直、一生忘れることはないですね」

 渋滞時、ドライバーは「自分のせいで予定が遅れてしまう」とナーバスな状態になりやすい。責任を追及する言動はなるべく控えたいところだが、これほど「逆ギレ」が甚だしいと、さすがに堪忍袋の緒も切れるというものだ。