再放送で再評価されている朝ドラこと連続テレビ小説『チョッちゃん』(NHK)。40年近く前のドラマなので、画や話にやや古さも感じる。だがそういった表層的なところを乗り越えて普遍的な魅力を見出す視聴者も少なくない。こういうのがいいと絶賛する声もあるほどだ。
朝ドラ第38作の『チョッちゃん』は、現在放送中の『あんぱん』が第112作なので、初期作といっても間違いではないだろう。放送された1987年はバブルのはじまり、日本が過去イチ浮かれかかっていた頃である。だがドラマは実に慎ましい。慎ましくも豊かで自由である。
『チョッちゃん』と『あんぱん』、それぞれの“戦争”
原作は黒柳徹子の母・朝の自伝『チョッちゃんが行くわよ』(主婦と生活社)で、北海道・滝川で生まれ育った北山蝶子(古村比呂)が東京で天才バイオリニスト・岩崎要(世良公則)と結婚し、子育てに励む。長女はつまり黒柳徹子で、ドラマでは加津子という名になっている。
ちょうど7月の終わりの放送では小学校に入った加津子が蝶子に輪をかけたように自由奔放で、先生を困らせ、退学を示唆された。
8月になると、黒柳徹子がのびのびと学んだことで有名になった理想的な学びの場・トモエ学園(ドラマでは杉山学園)に転入が決まる。ただ、ここからドラマは戦争の時代になっていく。何かと忍耐を強いられながらも蝶子たちは明るく前向きに生きていく。
対して現在本放送中の『あんぱん』では、戦争が終わり、戦時中に失われたものを取り戻すかのように、主人公・のぶ(今田美桜)の夫・嵩(北村匠海)が歌や漫画やアニメのヒット作を手掛けていく。嵩のモデル・やなせたかしの代表作『アンパンマン』が誕生する日が待たれるところだ。
『チョッちゃん』と同じく終盤に戦争時代を持って来た朝ドラには『ごちそうさん』(2013年度後期)がある。いずれもクライマックスは終戦を迎え日本が再生していく明るい希望に満ちたものになるのが常だ。
『チョッちゃん』は本放送当時、初回視聴率36.8%、平均38.0%、最高46.7%(関東地区・ビデオリサーチ調べ)という好成績だった。当時の人気の理由は明白である。
