『チョッちゃん』の人気を支えた2つの“神話”
当時、83年の橋田壽賀子の『おしん』の大ヒットもあって朝ドラ神話が確立していたと想像できる。
81年には、黒柳徹子の『窓ぎわのトットちゃん』が大ベストセラーとなり、黒柳徹子神話も同時に確立していた。その母の物語で徹子をモデルにした人物も出るとあっては、国民は皆、見逃せなかっただろう。
語りは西田敏行。81年の大河ドラマ『おんな太閤記』の秀吉役で国民的俳優になっていた。
蝶子の恩師・神谷に役所広司。83年、大河ドラマ『徳川家康』で野性味あふれる織田信長役で注目され、84年、NHKの新大型時代劇『宮本武蔵』で主演、実力と人気共に登り調子の時期だった。
主演はオーディションで選ばれた新人・古村比呂。北海道出身だけあって北海道の言葉がハマっていた。
彼女を取り巻く俳優陣が、父役に名優・佐藤慶、母役に歌手としても著名な由紀さおり。ふたりは朝ドラ初出演。佐藤はそれまで夜のドラマの顔であったがイメージを一新、朝の顔になった。由紀は83年、松田優作主演、森田芳光監督の奇才が組んだ映画『家族ゲーム』の母親役が話題になっていた。
夫・岩崎要役の世良公則はロックバンド、世良公則&ツイストで70年代に大ヒットを飛ばし、80年代は俳優として『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)の刑事役(ボギー)も演じてお茶の間の人気者だった。
幼なじみの頼介役の杉本哲太はロックバンド紅麗威甦から俳優になり、世良と似たような道を歩んでいた少し下の世代。ほかに前田吟や佐藤オリエは山田洋次監督の『男はつらいよ』ファミリー、落語家の春風亭小朝も参加して、圧倒的に幅広い人気を誇るキャストが集結していた。視聴者が知らない人はいない、安心感しかない顔ぶれで占められていたのだ。
87年当時は、いまほど多メディア時代ではなかったから、国民が一斉に同じものを見て楽しめていたのだろう。『チョッちゃん』にはこれを見ていれば安心という要素が詰まっていた。
