戦前に撮られた“家族のルーツ”が写った写真

――ご家庭に眠っている写真?

ホリーニョ ご家族で大事に保管されている思い出の写真は、社会的にも大切に扱うべきものだと思うんです。沖縄の写真は特に、激しい地上戦や空襲で焼失してしまったり、湿度の高い環境で劣化して駄目になってしまっていたりするので、残っているものは本当に貴重だと思います。それをカラー化するだけではなくて、写っている方たちの思い出やお写真の背景を教えていただいてまとめたいと思っていて。

 例えば、こちらの写真はSNSでご依頼をいただいてカラー化したものです。

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カラー化後(写真=ホリーニョさん提供)
カラー化前(写真=ホリーニョさん提供)

 ご依頼者のお祖父様が一番左に写っていて、当時は9歳だったそうです。真ん中がお祖父様のお母様で、沖縄で戦争が始まると聞いて、記録を残すために1944年〜45年あたりに撮影されたとか。写真に写った方のうち2名が戦死されて、2名が数年前に他界され、2名がご存命だと伺いました。写真中央の膝に抱かれた少女が今もご存命の方で、依頼者の方が直接お会いした際に、丁寧にお話を聞いていろいろご共有してくださったんです。

 なぜカラー化をご依頼されたのか。そんな想いも教えていただいて。「家族のルーツとなる戦前写真がこの写真1枚しかなかったため、カラー化して細部まで見てみたかった」「戦渦を生き延びた現在存命の2名もかなり高齢となったため、できることをしてあげたかった。鮮やかな状態の写真を見せてあげたいと思った」「カラー化をすることで親族の会話が広がると思った」とおっしゃっていました。

 実際にカラー化した写真は、ご親族が集まる場でご覧になったそうです。皆さん興味を持ってくださって、それぞれのルーツについて語り出す雰囲気になり、ご依頼者の方が知らなかった話も飛び交ったとか。「貧しかったはずなのにどうやってこの写真を撮ったのか」と不思議がる親族の方もいたそうですが、「写真を撮って残してくれていたこと、写真が残っていたことの両方に感謝しました」と教えてくださいました。