朝日新聞のあっさりした経緯とは異なり具体的だった。また、「閉ざされた寮生活の中で、暴力が蔓延していたのではないかと疑いたくなる」ともあり、「見えづらい寮生活」と書いた朝日よりも踏み込んでいる。
沈黙が続いた朝日だが、ようやく社説で…
産経新聞の社説は広陵の校長が事実の隠蔽や矮小化などは「一切ない」とも断言したことについて「それなら大会を辞退する必要はなかったはずだ。被害生徒側が不満を残した初動調査の不徹底こそ、大いに反省すべきである」と書く。読売も産経もライバルの朝日が高校野球の主催だから社説でもさっそく書いたのかもしれないが、指摘はその通りではないか。
この時点(8月13日)で朝日新聞は広陵問題に社説では触れていなかった。もしかしてこのままスルーなのか、そう思える沈黙が続いた。すると17日にようやく社説で取り上げた。『広陵高校辞退 暴力を根絶するために』というタイトルだった。面白かったのは次だ。
「高野連と、夏の甲子園大会を共催する朝日新聞社は、対応を考えねばならない。」
のんきだなぁ、今さらか。まるで他人事である。そして次。
「より透明性の高い仕組みを目指してどんな手を打てるか。高野連とともに責任と役割を積極的に担っていきたい。」
何か言ってるようで何も言っていない、社説のお手本のような書き方だ。それなら記者を何人も広陵に送り込み、「見えづらい寮生活」などと寝ぼけたことを書いてお茶を濁さず、実態のスクープを連発したらどうか。それが主催の新聞社としての責任だろう。
朝日新聞にとって高校野球は「大事なお客様」という点でジャニーズ問題とも似ている。あれも見て見ぬふりをし、それまでの偽善と欺瞞がバレた案件だった。反省したはずだが今回と何が違うのか。
8月13日の朝日夕刊のコラム「素粒子」は、
《「南京事件はなかった」という国会議員。気に入らぬ雇用統計を出した局長をクビにする米大統領。「なかったと100回言えば、なかったことになってしまう」。731部隊の元隊員が、本紙に。》
と憂えていた。それなら朝日新聞さん、高校野球の暗部にもどうぞ踏み込んでください。期待しています。
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