4/4ページ目
この記事を1ページ目から読む
こうした日記を記した鈴香に対して、前出の鑑定医は彼女の生育、生活環境に起因する「人格障害」との見方をしている。中高生時代に繰り返された父親(故人)による暴力と、同鑑定医曰く「近すぎる」母親との関係が、こうした人格を形成したというのだ。
鑑定医は鈴香の精神鑑定時に、100の単語を次々と口頭で提示し、それを聞いて連想した言葉をなるべく早く答えさせる「言語連想検査」を行っていた。たとえば「女」→「母親」、「先生」→「大学」、「心」→「不安」といったやり取りである。
この検査で出た刺激語(単語)に鈴香は2~5秒で反応していたが、なかには10秒以上経過しても連想できない刺激語もあったようだ。そういう反応不能と判定された刺激語は、意識下に抑圧され、本人にも自覚できない「力」が作用していると考えられており、潜在する強い葛藤の存在が窺えるとされる。
ちなみに、鈴香が反応不能を起こした刺激語は、「妻」、「罰」、「嘘」、「正直」、「軍手」、「ありばい」、「目撃」の7語だった。
小野 一光(おの・いっこう)
ノンフィクションライター
1966年生まれ。福岡県北九州市出身。雑誌編集者、雑誌記者を経てノンフィクションライターに。「戦場から風俗まで」をテーマに北九州監禁殺人事件、アフガニスタン内戦、東日本大震災などを取材し、週刊誌や月刊誌を中心に執筆。著作に『完全犯罪捜査マニュアル』『東京二重生活』『風俗ライター、戦場へ行く』などがある。
ノンフィクションライター
1966年生まれ。福岡県北九州市出身。雑誌編集者、雑誌記者を経てノンフィクションライターに。「戦場から風俗まで」をテーマに北九州監禁殺人事件、アフガニスタン内戦、東日本大震災などを取材し、週刊誌や月刊誌を中心に執筆。著作に『完全犯罪捜査マニュアル』『東京二重生活』『風俗ライター、戦場へ行く』などがある。
