「言うことをきかなければ、おまえの弟や妹にやらせるぞ」
小学校時代から近所に住む男性から度重なる性暴力を受け、PTSDになってしまった男性は、積年の恨みを晴らすため殺人に手を染めてしまう。「性暴力の加害者」と「その父親」を殺害した彼に科された罰とは? 2006年の事件のその後を、我が子を無惨に殺された親、学生時代ひどいイジメに遭った者などが仕返しを果たした国内外の事件を取り上げた新刊『世界で起きた戦慄の復讐劇35』(鉄人社)から一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
◆◆◆
「性暴力の加害者」と「その父親」を殺害
2002年4月、専門学校を卒業した後、実家に戻り就職。ただ、同じ会社に長く勤務すると性暴力の過去がバレると転職を繰り返す。体調は優れず、ストレス解消のため床やコンクリートを殴る日々。心配した両親が精神科病院に連れて行っても、症状が良くなることはなかった。
それから4年が経過した2006年1月、体調不良を治すには覚さんを殺害するよりないと模造刀の試し切りなどをしたうえ、具体的な殺害計画を練る。当時、覚さんは実家を出て山形市の自動車部品リサイクル販売店に勤務しており、なんでもゴールデンウィークに帰省するらしい。決行はそのときをおいてない。
同年5月6日19時ごろ、伊藤は自宅前で車を運転する覚さんを目撃する。その後、家でプラモデルを作っていたところ胸を締め付けられる痛みを覚え、翌7日午前3時20分ごろ、ビニール袋に軍手、刀を手に覚さん宅へ。玄関は施錠されておらず、そのまま屋内に侵入した。1階の寝室では覚さんの両親が寝ていた。どうやら覚さんは2階で就寝中らしい。
ゆっくり障子を閉め2階に上がろうとしたところ、後ろから「誰?」と声が聞こえた。母親が叫び声を出し後ずさるなか、今度は父親が「何だ」と自分に向かってきた。そこで、伊藤は模造刀で父親の腹部や胸を何度も刺して殺害。
ほどなく騒動に気づき2階から降りてきた覚さんを滅多刺しにして殺す。この際、犯行を止めようと間に入ってきた母親にも模造刀の柄の部分で頭部を何度も殴り大怪我を負わせ、そのまま逃走した。
