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目が見えないって別に特別なことではない
2017年、都内の日本視覚障害者職能開発センターに通い始めた。週に2〜3回、1年間、館山からバスで片道2時間かけて新宿まで出て、地下鉄で四谷へ。スクリーンリーダー(音声読み上げ)ソフトを使ってワードやエクセルを使う技術を取得した。だがそれ以上に、「見えない」人たちと知り合ったことが糧となる。
「教える先生も生徒もみんな目が見えない人たちです。僕のように途中から見えなくなった人もいれば、生まれたときから視力のない人もいます。目が見えないって別に特別なことではないと思えた、それが僕にとって大きかった」
都心に通い始める前に、半年ほど歩行訓練士の支援を受けて白杖で歩く練習をしていた。白杖を道連れに少しずつ行動範囲は広がっていく。職能開発センターで知り合った全盲の友人は白杖を使い早足でスタスタと自在に歩いた。
「僕も見えなくなるまで全盲の知り合いはいませんでした。見えなくなって初めて、見えないという自分の条件に合わせた人生の歩き方で、堂々と生きる人たちの存在を知ったわけです。見えなくなって、見えたことです」
(後編へ続く)
三宅 玲子(みやけ・れいこ)
ノンフィクションライター
熊本県生まれ。「ひとと世の中」をテーマに取材。2024年3月、北海道から九州まで11の独立書店の物語『本屋のない人生なんて』(光文社)を出版。他に『真夜中の陽だまり ルポ・夜間保育園』(文芸春秋)。
ノンフィクションライター
熊本県生まれ。「ひとと世の中」をテーマに取材。2024年3月、北海道から九州まで11の独立書店の物語『本屋のない人生なんて』(光文社)を出版。他に『真夜中の陽だまり ルポ・夜間保育園』(文芸春秋)。
