〈あらすじ〉

 1989年、アメリカ・ニューメキシコ州の田舎町。トレーニングジムの従業員として単調な生活を送っていたルー(クリステン・スチュワート)は、オクラホマ州からやってきた筋骨逞しい女性ジャッキー(ケイティ・オブライアン)と出会う。ラスベガスで開催されるボディビル大会で優勝するのが夢だと語る彼女に、ルーは、ジムで買いためてあった筋力増強に効くステロイドをプレゼント。それをきっかけに2人は愛し合い、ともに暮らすようになる。

 そんなある夜、ルーの姉が夫からの暴力によって緊急搬送される。父親でジャッキーのバイト先の射撃場のオーナー、さらに町のフィクサーでもあるルー・シニア(エド・ハリス)も病院に駆け付け、自分が話をつけると言うがルーの怒りは収まらない。それを見たジャッキーは衝動的にある行動に出てしまう。

〈見どころ〉

 本作が長編2作目のグラス監督。前作は狂信の末に暴走するカトリック信者の看護師を描いたサイコホラー。今回もテーマは通底していると語る。

愛のために傷つき抗う恋人達を描くクィア・ロマンス・スリラー

闇社会に生きる父を持つ女性と放浪ボディビルダーの激しい愛の結末をVFXを使った大胆な演出で描く。第74回ベルリン国際映画祭出品。世界各国の映画賞で44ノミネート、映画ファンや批評家からも評価の高い一作。

©2023 CRACK IN THE EARTH LLC; CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED 配給:ハピネットファントム・スタジオ
  • 芝山幹郎(翻訳家)

    ★★★★★登場人物に基礎体力があるせいか、筋肉も性欲も暴力衝動も笑いたくなるほど強くて激しい。K・スチュワートの脱皮やE・ハリスの怪演にも要注目だが、流れ者ケイティ・オブライアンの存在感が抜群。タフな肉体と荒々しい土地がこすれ合って、ジム・トンプスンの暗黒小説に通じる匂いが立ち込める。

  • 斎藤綾子(作家)

    ★★★★☆スポーツジムでの一目惚れの恋物語。殺人と家族愛から抜け出せない蟻地獄の日常で恋に落ちるルー。彼女の極悪な父親をE・ハリスが異様な魅力で演じ、彼を押さえ込む巨大な筋肉女子(その性幻想が素敵)の放つ愛は過剰なステロイド故。「ノンケの思い出作りじゃないよね?」の台詞が刺さった。

  • 森直人(映画評論家)

    ★★★★☆電撃的な女性カップルの犯罪&逃亡劇にボディホラーの心臓を埋め込んだB級系の超逸品。『テルマ&ルイーズ』とも『バウンド』とも異なるワイルドサイドを爆走。エド・ハリスら脇の狂った変態怪演も面白さを増強する。1989年仕様の意図的に激安なカラーリングとスタイリングもばっちりだ。

  • 洞口依子(女優)

    ★★★★★こんなクリステンが観たかった! 愛のステロイドを過剰摂取した血みどろのテルマ&ルイーズ?! ファム・ファタールが画面に君臨するネオノワール。画面がシュールになると思わずワオ!と声が漏れてしまうほどぶっ飛んだ才能、グラス監督恐るべし。80年代シンセの音と映像とE・ハリスとの相性も抜群。

  • 今月のゲスト
    マライ・メントライン(著述家)

    ★★★★★【依存性】のヤバさを軸に疾走する、まさにジャンルを超えた怪作にして傑作。犯罪サスペンスとしてはかなり無茶苦茶ながら、絵的におもしろ素晴らしい瞬間(但しグロあり)が満載で、場面転換の妙もあり、これで凄い映画が成立してしまうんだ! という強烈な感興に浸れること請け合い。絶対オススメ!

    Marei Mentlein/1983年、ドイツ生まれ。テレビプロデューサー、コメンテーターとして幅広く活動。最新著書は『日本語再定義』。

  • 最高!今すぐ劇場へ!★★★★★
  • おすすめできます♪★★★★☆
  • 見て損はない。★★★☆☆
  • 私にはハマりませんでした。★★☆☆☆
  • うーん……。★☆☆☆☆
鍛え上げられた魅力的な肉体に純朴で繊細な心を宿すジャッキーを演じるのは、格闘家、警察官、ボディビル選手という異色の経歴を持つK・オブライアン。本作が初の大役となる。
©2023 CRACK IN THE EARTH LLC; CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED 配給:ハピネットファントム・スタジオ
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『愛はステロイド』
8月29日(金)〜
監督・脚本:ローズ・グラス(『セイント・モード/狂信』)
共同脚本:ヴェロニカ・トフィウスカ
2024年/英、米/原題:Love Lies Bleeding/104分
https://a24jp.com/films/loveliesbleeding/