〈あらすじ〉

 12歳の少女ベイリー(ニキヤ・アダムズ)は、その日暮らしの父親バグ(バリー・コーガン)と腹違いの兄ハンター(ジェイソン・ブダ)と郊外の下町で暮らしている。親しい友もなく、身の周りの風景や生き物をスマホで撮影し、その動画を壁に投影することで閉塞感と孤独を紛らわしながら……。

 そんな中、バグが知り合ったばかりの恋人ケイリー(フランキー・ボックス)と結婚すると言い出す。一方、ハンターは友人らと自警団を結成。しかしベイリーは入団を拒否されてしまう。やりきれない気持ちで辿り着いた草原で出会ったのが“バード”と名乗る奇妙な男(フランツ・ロゴフスキ)だった。「両親を探している」とバード。どこか放っておけないその雰囲気に、ベイリーは彼を手伝うことを決める。

〈見どころ〉

 撮影監督は、ケン・ローチ監督作品や『哀れなるものたち』などで知られるロビー・ライアン。16ミリフィルムのざらついた画質とスマホのデジタル映像を組み合わせ、詩的な映像美を作り出している。

少女の成長を描くヒューマンドラマ

社会の片隅に生きる人々を描き、世界で絶賛されつつも日本では作品の劇場公開の機会がなかったイギリスの名匠アンドレア・アーノルドの最新作。第77回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品。

©2024 House Bird Limited, Ad Vitam Production, Arte France Cinema, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Pinky Promise Film Fund II Holdings LLC, FirstGen Content LLC and Bird Film LLC. All rights reserved. 配給:アルバトロス・フィルム
  • 芝山幹郎(翻訳家)

    ★★★☆☆背景の土地や生活環境を丁寧に選び、社会派的リアリズムと魔術的リアリズムを融合させようとしている。その意欲は買いたいが、空転も眼につく。登場人物の荒み方や手持キャメラの多用が、やや浮き上がる。

  • 斎藤綾子(作家)

    ★★★★☆歌って踊るお気楽男が父親で、幼子を抱える別居の母親は暴力男と添い寝。ベイリーを取り巻く家族は貧しくバラバラで不幸に見えるが、理屈抜きの愛がある。薄暗い光景で鳥の眼差しが語りかけるよう。幻想的な映像がいい。

  • 森直人(映画評論家)

    ★★★★☆ケン・ローチ監督の1969年の名作『ケス』から受け継いだDNAを寓話的に独自培養したような魅力。荒んだ現実の中でも人間同士の相互理解の可能性を探る眼を棄てず、前向きで優しい感触を残す。主演の少女も撮影も抜群。

  • 洞口依子(女優)

    ★★★★☆日本では何故か認知度が薄いアンドレア・アーノルド監督の価値ある1本。素人を演技ではない魅力で引き立てる。ケン・ローチを想起するが、この監督の凄みは、心理描写と動物や自然の比喩が見事に統合されている点かも。

  • 今月のゲスト
    柳亭小痴楽(落語家)

    ★★★★☆ただ大人になるまで生きていく事すら困難な環境がある。優しさだけではどうにもならないと分かっているから悩むが、だからこそ、その優しさが光って見えた! 劣悪な環境の中にもある幸せを表したエンドロールも必見。

    りゅうていこちらく/1988年、東京都生まれ。落語家。若手真打の一人としてメディアでも活躍中。著書に『令和の江戸っ子まくら集』など。

  • 最高!今すぐ劇場へ!★★★★★
  • おすすめできます♪★★★★☆
  • 見て損はない。★★★☆☆
  • 私にはハマりませんでした。★★☆☆☆
  • うーん……。★☆☆☆☆
不思議な存在感で物語を牽引するバード役にフランツ・ロゴフスキ。自己中心的だが愛情深い父親役はバリー・コーガン。ともに大物監督から愛される若手個性派俳優2人の共演は必見。
©2024 House Bird Limited, Ad Vitam Production, Arte France Cinema, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Pinky Promise Film Fund II Holdings LLC, FirstGen Content LLC and Bird Film LLC. All rights reserved. 配給:アルバトロス・フィルム
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『バード ここから羽ばたく』
監督・脚本:アンドレア・アーノルド
2024年/英、米、仏、独/原題:BIRD/119分
9月5日(金)~
新宿ピカデリー、Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座ほか全国公開
https://bird-film.jp/