「あいつはオカマを装っている」と思われたことも

矢神 高校生の頃ですね。高校ってゼロスタートだから何でも言えると、入学式にヘアピンとかつけていきました。「あの子、オカマじゃない?」と言われたら「オカマだよ」って。でも見た目がまだ男性だから「あいつは女と仲良くなりたいから、オカマって嘘をついている」と思う人もいて。世の中はややこしいんです。

 ただ高校生って大人じゃないですか。自我がちゃんと目覚めているから人間対人間って感じでしたし、先生も「男性に生まれたからって女性を好きになるだけじゃないんだよ、男の子でも男の子が好きになる人はいます。動物界でもあることなんだよ」って授業もしてくれました。

――ご両親へのカミングアウトは?

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矢神 お母さんに先に言いました。お母さんは天然が入っているので「なんか今の子ってそうだよね」みたいな感じで終わったんですけど(笑)。お父さんには性別適合手術をした23歳くらいの時に言いましたね。寡黙な人であんまりしゃべったことなかったんですよ。その歳まで生きてきて、本当に全部で2時間ぐらい(笑)。仕事が忙しい人で、塾経営と医療関係の事務みたいなのを掛け持ちしていました。

©深野未季/文藝春秋

――大学には早くから行かないと決めていたそうですね。

矢神 中学校ぐらいから東京に行ってアイドルになろうと思ってたんですよ。キラキラした世界に行くぞって。ただお父さんは冗談だと思っていたらしくて、高校3年の1月に私の部屋に入ってきて「大学どうするの?」って聞かれて。いや、行かないって言ったよねって(苦笑)。そもそも1月だし、受験の手続きとか全部終わっちゃってるから、今さら言われてもとなって。

 お母さんと高校3年生の8月には東京に行って、家も決めてたんですよね。就職とかは決めず、東京では新宿2丁目で働こうと思ってました。お母さんもごはんが食べられるのなら、それでいいって。今思えば信じられないですよね(笑)。

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