サイド7と真珠湾攻撃
ここで読者の方々に改めて想起していただきたい。ファーストガンダムのシャアは連邦軍の「V作戦」を察知した際に、自らは母艦にとどまり部下だけをサイド7に侵入させた結果、ザク2機を失い、その後もガンダムを擁するホワイトベース隊に煮え湯を飲まされ続け、ララァを失ってニュータイプ部隊の実戦化にも失敗。キシリアを暗殺したことを除いてシャアの存在は一年戦争の帰趨にほとんど影響を与えられず、ジオンは連邦に敗北した。
一方、ジークアクスのシャアは自らサイド7に乗り込んだ結果、ガンダムとペガサスを奪取。ガンダムの技術を流用したモビルスーツ「ゲルググ」をジオンが量産することで、ジオンの戦力向上に貢献をした。サイコミュを搭載した赤いガンダムに乗り込み、同志のシャリア・ブルと共にニュータイプ部隊を実現。彼らの攻撃はソロモン駐在の連邦軍艦艇に大打撃を与えている。ジークアクスの世界ではソロモン攻略後の連邦軍優勢は続かず、逆に連邦側の拠点ルナ・ツーをジオンに攻略されている。シャアとシャリアがソロモンの連邦軍艦隊に与えた損害が戦局に影響した可能性は十分にある。ゲルググの独自開発を放棄したことがジオンの国力に余裕を生み、ルナ・ツー攻略の主力となったモビルアーマー「ビグ・ザム」の量産につながった可能性もある。シャアの活躍がジオンの勝利に大きく寄与したと思えるのだ。
「ファーストガンダムのシャア」と「ジークアクスのシャア」の対比は、「日本にとどまり、真珠湾攻撃に参加しなかった史実の山本五十六」と「真珠湾攻撃を直接指揮し、好機を逃さずさらなる戦果を求めようとした〈if〉世界の山本五十六」とのコントラストとあまりにも似通っている。これはシャア・アズナブルと山本五十六が共に戦争の帰趨をたった一人で左右しうる「要」「特異点」とも言えるポジションにいたことの証しではないか。
《この続きでは、山本五十六とシャア・アズナブルの類似点をさらに掘り下げています》
※本記事の全文(約1万2000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(太田啓之「『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の謎を解く シャア・アズナブルはなぜ救済されたのか」)。全文では、下記の内容をお読みいただけます。
