「いちいち反応するつもりはありませんでした」衣装が“裸に見える”と報道され続けた時の心境
――白ジャケットの下に着たベージュのインナーが裸に見える、と書かれたそうですね。
中川 「まさかそんなふうに見えるなんて」と、本当にびっくりしました。現場のスタッフも誰もそんな印象をもっていなかったので、なおさらです。
その衣装と本業とを結びつけたかたちでいろいろ書かれてしまったんですけれど、でも、私は真剣に仕事に取り組んでいるからこそ、オリンピック取材という大きな仕事にも関わらせていただけているんだけどな……と。
――そもそも、スタイリストの方が用意した衣装ですよね。
中川 そうですね。選手たちが金メダル取れるといいなということで、ゴールドのインナーを合わせてくれたんです。ただ、そういった心ない声に対して、いちいち反応するつもりはありませんでした。
――スルーするというか。
中川 ただ、まったく影響を受けてなかったかというとそんなことはなくて。毎日のようにさまざまなかたちで裸に見える衣装のことが書かれ続けていて、現地にいてもずっと気持ちが重かったですね。
でも、プエルトリコで過ごしていた頃に見た、CNNの女性キャスターが自分の意見をはっきりと伝える姿、あの“自分らしさを堂々と表現する姿勢”に憧れがあったので、「自分らしくいて何が悪い? 絶対に屈しないぞ」と、むしろ気持ちが強くなった部分もあります。そして、そうやって自分を貫ける人がもっと増えてほしいな、とも思いました。
もちろん、TPOをわきまえることは社会人としての最低限のマナーだと思っています。でも、オリンピックの一件を通じて、より一層、自分の軸が強くなった気がしています(笑)。
NHKを退社してフリーに転向した理由
――パリオリンピックの翌年、NHKを退社されます。きっかけは?
中川 『サンデースポーツ』という番組でスポーツキャスターを務めていたのですが、その現場が本当に楽しかったんです。スポーツの持つ熱量や、勢いある生の現場に関わることができて、毎回とても刺激的で。だからこそ、もしそういった現場から離れることになったら、それが自分にとっての潮時なのかもしれない、そんな風にうっすらと感じていました。
そんな中、スポーツキャスターとしては花形ともいえるオリンピックの開閉会式に携わったことは、大きな達成感がありました。だからこそ、もしかしたらこのフィールドでの役割はそろそろ終わりに近づいているかもしれないと少しずつ感じはじめていたように思います。
そして今年1月、実際にスポーツキャスターを卒業することが決まり、その時「あっ、やっぱり今がタイミングかもしれない」と自然と心が動きました。

