うつ病の認知が現在ほど広がる前には、うつ病になりやすい人には何か特徴があるのではないかと考えられていました。

例えば、真面目で人への気遣いが強い「メランコリー親和型性格」、負けず嫌いで凝り性な「執着性格」、気分の浮き沈みが激しい「循環性格」、こだわりが強く何事にも完璧さを求める「完全主義性格」などです。

ところが、その後の研究によると、強いストレスにさらされると、どんな人でもうつ病になる可能性があることが分かってきました。「特定の性格だからうつ病になる」ということは一概に言えないのです。

ADVERTISEMENT

ましてや「心が弱いからうつ病になる」ということはありえません。

うつ病になるのは、その人の個性が問題なのではありません。個性と環境との相性が合わないことから、ストレスを感じてしまうのです。合わない職場で働いたり、合わない学校に通い続けたりしたら、個性は生かされないどころか、否定されるようなことばかりが起こります。そうしたストレスが、うつ病を発症する引き金になります。

うつ病になりやすい“4つの仕事”

例えば、「対人関係の苦手な人が、高度な対人関係を要する営業職に就く」「社交的でジッとしていることが苦手な人が、ひたすら数字を追わなくてはならない経理職に就く」といった状況がよくありません。

ただし、職業別の調査によると、その人の個性とは関係なく、うつ病になりやすい職業というものがあります。

それは、医療、介護、教育、顧客サービス(宿泊施設の従業員、キャビンアテンダント、飲食店の接客など)などの仕事(※)です。

※筆者註:「過労死等の労災補償状況」(厚生労働省、令和5年度)、別添資料2「精神障害に関する事案の労災補償状況

 

これらの職種は「相手に合わせて自分の感情をコントロールする必要があるため、本音を表に出せない状況が続くことでうつ病のリスクが高くなる(※)」と言われています。

※筆者註:関谷大輝,他「対人援助職者の感情労働における感情的不協和経験の筆記開示」『心理学研究』(2009; 80: 295-303)