日本の公的医療保険は利便性の高さに定評があり、「世界に冠たる国民皆保険」ともよばれている。しかし、少子高齢化が進む中、その持続可能性については懸念も大きい。慶應義塾大学教授の伊藤由希子氏が、「国民皆保険」を次世代につなげるためのエッセンスについて考察した。

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公平性と効率性が不可欠

 拙稿では、国民皆保険が持続的であるために不可欠な制度の公平性・効率性について考察する。公平性とは、納得のゆく形で負担が設計され、いざというときには便益が受けられることである。公平性は社会全体が制度を信頼できるようにするために重要である。効率性とは、必要性や緊急性が高いものに資源が配分され、財源が効果的に使われることである。この二つが改善されれば、国民皆保険はまだ救える。

病院の待ち時間が長いのは悩みの種 Ⓒアフロ

 1961年の国民皆保険達成以降、日本の経済成長や平均寿命の延伸の流れと共に、皆保険制度は隣国の台湾や韓国で見本とされた。日本より後に制度を構築したことの利点は、日本の課題に学ぶことができたことにある。両国の現在の制度は、公平性・効率性の点で、明らかに日本のはるか先を行く。

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 その違いが顕著に表れたのが新型コロナウイルス感染症の対策だ。平時ならば、生活の中で他国の医療保険制度というものは、知ることも影響を受けることも少なく、あまり気にならない。しかし、世界にほぼ同時期に広がった感染症は、各国の特色も課題も浮き彫りにした。