しかし、趣味の話をして警戒心を解こうと思っても、冷たい反応が返ってくるだけで盛り上がらないケースも多いと思います。警戒が強ければ、急にプライベートの話に踏み込むよりも、ニュース、PRから得られる先方のビジネスの状況や業界についての雑談、インタビュー記事やSNSなどから得られる先方の考えについての話など、パブリックな話題でのアイスブレイクのほうが心を開いてくれるケースもあります。

 一方で、3割の人は仕事に関係ない雑談を求めており、プライベートな話をしてもらいたいと思っています。

 このように、アイスブレイク一つとっても、相手が求めていることは違うのです。決まった型を繰り返すだけでは、突き抜けた成果を出すことが難しいということが理解できると思います。

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 型通りの提案をマスターしたあとに次のステップに進むには、顧客に合わせてカスタマイズした提案ができなければなりません。

©AFLO

 そして、この「顧客に合わせてカスタマイズした提案ができるようになる」というスキルの習得には多くの人が苦労しているのではないでしょうか。

なぜ「教える」のが難しいのか

 私も多くの営業メンバーの育成に携わってきましたが、型を覚えさせて基本的な提案ができるようにすることには、そこまで苦労しませんでした。ところが、顧客に合わせた提案ができるような営業の育成は非常に難しく、最初からセンスのある一部のメンバーだけが自力で成長している状況でした。

 これはよくよく考えると当たり前で、型を覚えるという行為の延長線上にカスタマイズ提案がないからです。型を練習すれば型どおりに上手く話すことは上達しますが、どんなに練習しても顧客に合わせて自分で提案を考える力はつきません。

 型をマスターしたあとに別のスキルを身につけることが必要なのです。

 学生時代に勉強が得意だった人が営業では成果を出すことができず、苦手だった人のほうが成果をあげることが多いのは、この「別のスキルが必要だ」ということが理解されていないからです。