キーエンス出身のビジネスパーソンとして活躍する鈴木眞理氏によると、学生時代に勉強が得意だった人が営業では成果を出すことができず、苦手だった人のほうが成果をあげることが多いという。背景に隠れている理由は何だろうか。 

 ここでは、同氏の著書『仮説起点の営業論 キーエンスに学び、磨いたセールス・スキル』(角川新書)の一部を抜粋。営業、マネジメントについての見解を紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)

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受験偏差値が高いのに売れない営業

 私は、学生時代は比較的勉強ができたほうだと思います。キーエンスにおける新卒研修のペーパーテストでも1位を取っていました。

 そんな私は営業の現場に出ると思うように売れず、勉強があまり得意ではない同期のほうがガンガン売っていました。

 その後、自分がマネージメントをするようになると、当時の私と同じタイプのチームメンバーにたくさん出会いました。

 学生時代に勉強ができ、プロダクトの知識もあり、人当たりもいい。社内業務もそつなくこなすのですが、成果がでない。顧客のニーズが顕在化している場合にはまだいいのですが、ニーズが潜在的な顧客に対しては成果が出ませんでした。

©AFLO

 そんなメンバーや当時の私に共通していたのが、提案の型を覚えるのは早く、基本的な提案はすぐできるようになるのですが、顧客に合わせてカスタマイズした提案をすることが苦手という点でした。

 学生時代のテストには必ず答えがあります。一方、営業、ビジネスには絶対の正解はなく、どんな選択をしても必ずリスクが伴います。学生時代に勉強が得意だった人は教わった公式通りに問題を解き、上手くいった成功体験があるので、型通りにやることに固執してしまいます。

 また、学校では教わった通りにやらずに失敗すると、怒られます。怒られ慣れていない人は失敗することを恐れて、教わったこと以外にチャレンジしないというクセがついてしまっているのかもしれません。

 もちろん、型通りの営業をマスターするだけでも最低限の成果を出すことはできます。しかし、型を捨てて顧客に合わせて提案をカスタマイズできなければ突き抜けた成果は出せません。

 当たり前ですが、顧客はそれぞれ考えていること、状況が違います。同じ提案で全ての顧客に響くわけがないからです。

 株式会社セレブリックス・今井晶也さんの『お客様が教えてくれた「されたい営業」』(フォレスト出版)という本の中に、次のようなアンケート結果が載っています。