NHKスペシャル枠で8月16、17日の2夜、ドラマ『シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~』が放映された。しかし、主要な登場人物である陸軍中将・飯村譲をモデルにした人物は、史実における飯村の姿とは“正反対”であったという。飯村の孫であり、国際政治アナリストの飯村豊氏が、NHKの“不誠実な姿勢”を告発する。
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ドラマでは、“自由な議論の最大の壁”とされた
NHKが総力戦研究所を舞台としたドラマを作っていたことは、7月までまったく知らなかったのですが、実はNHK関係のプロダクションの方から戦後80年を迎えるのを機にNHKスペシャルの番組として総力戦研究所についてのドキュメンタリーを作りたいと考えているという相談を受け、6月末から3度ほど、我が家で取材に応じました。丁度最後の取材が終わった頃、7月下旬に別の方から「ドキュメンタリーではない番組が流されるようだ」というお話を聞きました。急な話に驚いて、NHKのホームページを開いてみると、このドラマの7月16日付けの告知が出ていたのです。
猪瀬直樹さんが書かれたノンフィクション『昭和16年夏の敗戦』が「原案」とされていて、近衛文麿や東條英機、木戸幸一内大臣、昭和天皇などが実名で登場します。ところが総力戦研究所の関係者は、すべて仮名でした。
キャスティングの紹介を読むと、祖父の飯村穣中将に当たる役柄は階級も変えられ、次のようになっていました。
〈●板倉大道(いたくらだいどう)役 國村隼
陸軍少将。総力戦研究所の所長。若きエリートたちの頭脳をアメリカとの戦況予測に使うべく研究を開始させる。だが、軍上層部の思惑とは異なる研究結果が出始めると、自由な議論の“最大の壁”となっていく〉
