『西遊記』に抜擢されるも、撮影で馬が暴走し号泣
夏目の最初の当たり役といえば、何といってもドラマ『西遊記』(1978~79年)での三蔵法師役だろう。当初、この役には然る歌舞伎俳優が内定していたものの、諸事情からキャンセルとなったため、スタッフらが「思い切って面白いのを使えばいいじゃない」として急遽、彼女を抜擢したのだという(夏目雅子伝刊行会編『夏目雅子――27年のいのちを訪ねて』まどか出版、2001年)。
劇中で三蔵法師は白馬に乗っていたが、その馬があるとき突然暴走したことがあった。馬上の彼女はたてがみを必死につかんで振り落とされずに済んだものの、もう二度と馬には乗らないと訴えた。それでも監督やスタッフの懸命の説得により、泣きながら再び馬にまたがるや豹変する。
「とたんにガラッと変わって迫真の演技を」
主人公の孫悟空役の堺正章によれば、《とたんに表情がガラッと変わって“悟空!”と、迫真の演技に入ったんですよ。それで、この子は新人だろうけど非常に度胸がすわった子だな! と感心しました》(『週刊平凡』1985年10月4日号)。のちに意表を突く演技をすることから「夏目マサカ」と呼ばれた片鱗がすでにこのころ現れていたらしい。
演技をしっかり学ぶために事務所を移籍
初めこそセリフは少なかったが、回を追うごとにもっと三蔵法師を出してほしいと視聴者から要望があいつぎ、セリフもどんどん増えていく。好評を受けて『西遊記Ⅱ』(1979~80年)もつくられた。その撮影が始まった頃、夏目は鈴木瑞穂や石立鉄男など新劇出身のベテラン俳優が所属していた其田事務所へと移籍している。それまでの所属事務所は彼女をバラエティ番組に出演させるようになっており、演技をしっかり学びたかった彼女は、芝居をきちんとやっている俳優たちのいる同事務所に入りたいと自ら申し出たのだった。
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