『あなたを疲れから救う 休養学』(片野秀樹 著)東洋経済新報社

 とくに病気に罹っているわけではないのに、寝ても疲れが取れない、体がスッキリしないことはないだろうか。その原因は、どうやら休養の取り方にありそう、ということが本書を読むと見えてくる。

 著者は一般社団法人日本リカバリー協会代表理事を務める医学博士。日本では「休む=怠ける」と捉え、休むことに罪悪感を抱く人が多いことを問題視。健康づくりの三大要素「栄養・運動・休養」のうち休養だけが学問的な体系化が進んでいない状況を疑問に感じ、休養学を提唱、研究を続けてきた。

 本書ではその知見を基に、休養リテラシーを高めるための科学的な解説が綴られている。

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 休養といえば寝る、もしくはとにかく体を休めることと思うかもしれないが、著者曰くそれは「守りの休養」で、これだけでは十分な「充電」とはならない。体の疲れが取れて、さらに活力を得られるような「フル充電」の状態にするには、あえて自分に負荷をかける「攻めの休養」が必要だという。

 たとえば週末を家でダラダラと過ごすより、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動をした方が、血液の流れがよくなり疲労感の軽減に繋がるのだそうだ。休養学では運動も休養の1つと定義。本書では運動を含めた7タイプの休養を紹介し、それを複合的に行うことを提案している。

 本書の大ヒットの理由は、それだけ疲れている人が多いということだろうか。

「加えて、教養書的な表紙の力も大きかったと思います。タイトルと表紙の雰囲気から、書店では実用書ではなくビジネス書のコーナーに並べてもらえました。おかげで疲れているビジネスパーソンの目にも多く留まったのでは」(担当編集者の髙橋由里さん)

 読者層は男女半々。男性は50代以上が突出しているが、20代後半から30代にもよく売れているそう。

「20代の女性読者から『仕事を休むと周囲に差をつけられてしまうと思っていたが、焦る必要はないのだと感じた』という感想をいただきました。しっかり休養を取ることが仕事のパフォーマンスを高めるという著者のメッセージが響いたようです」(髙橋さん)

 本書に続く著者の第2弾、そもそも疲れないようにするにはどうしたらよいかをまとめた新刊『疲労学』も発売されたばかりだ。

2024年2月発売。初版6000部。現在18刷19万部(電子含む)

休養学: あなたを疲れから救う

片野 秀樹

東洋経済新報社

2024年2月28日 発売