男性と待ち合わせしたのに「ごめん。無理」と逃げられた過去も

――その後、2017年にご結婚されました。お相手は学生時代からのお付き合いの方とかですか?

佐野 いえ、友だちからの紹介で、社会人になってから会った人です。恋愛はずっと苦手でほとんど諦めてたんですけど。

「普通」な点に惹かれたという夫と、2017年に結婚した

――苦手になるきっかけがあった?

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佐野 中高時代、メールでやりとりをしていた男の子がいたんですけど、いざ待ち合わせの場所に行ったら素通りされたことがあって。

――佐野さんを見て逃げた?

佐野 事前に障害のことを話していても、結局、「ごめん。無理」ってなって。たぶん怖くなったんでしょうね。

「別に気にしないよ」って受け入れてくれた人もいたにはいたんですけど、なんか、優しさが私の求めているものと違うというか。

――「僕が車椅子押してあげるよ」みたいな、押し付けがましい感じとかですか?

佐野 そうそう。「自分で食べられる? 俺が食べさせてあげようか」とか言われても、「自分でできるし」ってなっちゃうんですよ(笑)。“優しくしてあげてる俺ってかっこいい”みたいなのが透けて見えるともうダメというか。

――今のパートナーの方には、それがなかった?

佐野 今の旦那は本当に普通というか、自然体でいられるなと。私が足で食事をすると、普通は驚くじゃないですか。「足でできるんだ。すごいね」とかって言う人もいたんですけど、それさえなかったんですよ。

 通路が狭かったら、何も言わなくても自然と物をどけてくれて、「あ、通れる?」みたいな。「この人、昔からの友だちだった?」っていうぐらい自然で。

昔からの知り合いかと思うほど、自然体でいられる点に魅力を感じたという

デート前日に、全身の写真を送ると……

――それは惹かれますね。

佐野 ただ、夫は夫で葛藤があったみたいです。付き合ってから聞いたんですけど、「ごめんだけど、本当は1回、会うかどうか迷った」って言われました。

 会ってもし私を傷つけるようなリアクションをとったらいけないけど、自信が持てなかったらしくて。それで友人に相談したら、「たぶんその子はいろいろ言われ慣れてるから、別に気にしないでよくない? 一人の子として接すればいいんじゃないの?」みたいに言われて、踏ん切りがついたそうです。

――佐野さん自身、以前の経験から、障害のことを相手に伝えるのに躊躇はなかったですか?

佐野 それこそ、夫を紹介してくれた友だちに、「私のこと伝えてくれてる?」って聞いたら「言ってないよ。てか、そこは私じゃなく有美が自分で言うことでしょ」って諭されて、反省しました。

 それで、デートの前日に長文で自分のプロフィールと全身の写真まで送ったら、彼から、「分かったよ。大丈夫だよ」と返事があったんです。