生まれつき両腕がなく、短い両足と計4本の指という“四肢欠損”で生まれた佐野有美さん(35)。2020年に念願の第一子を出産し、“四肢欠損ママ”として四肢欠損でも家事育児をこなせる姿を積極的に発信している。

 しかし、出産後にはSNSで心無い言葉を浴びることも多いと佐野さんは話す。誹謗中傷に対する思いや、差別・偏見に関する社会の変化についてなど、話を聞いた。(全3回の最終回/最初から読む)

2020年に第一子を出産した佐野さん 写真提供=本人、以下同

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“特別仕様”のキッチンを設けて、床に座ったまま調理できるように

――現在、家族3人暮らしということですが、家の中に「佐野さん仕様」の部分もある?

佐野有美さん(以降、佐野) マイホームを建てるときにいろいろ工夫してもらって、階段の段差を低くしたり、電気のスイッチの位置を足元につけてもらったりしてますね。

――これまでのお家ではどうやって電気をつけていたんですか。

佐野 アパート時代はリモコンで電気をつけてたんですけど、主電源がオフになっているとリモコンが使えなくなってしまうので、それで困ることもよくあって。

 なので、今の家では私がよく行くリビングと寝室だけ、通常の高さに加えて私用の低い位置にスイッチをつけてもらい、玄関などはセンサー式のものにしました。

 あと、基本的にすべて足で作業をするので、台所仕事は床でできるようなかたちにしたんです。

床にシンクを埋め込み、座ったまま調理できる特別仕様のキッチンがある

――床で調理や洗い物ができると。

佐野 そうですそうです。埋め込み式のシンクを作って、その隣に卓上のIHコンロを置いて料理をしています。

 あとトイレは、すぐ横に踏み台を作って、お尻を使って水平移動して便座に座れるようにしてもらいました。