「見ちゃダメ」「かわいそう」と言われない時代になりつつある
――それだけ当時、ご両親は世間の風当たりを感じていたと。
佐野 今はだんだんと差がなくなってきたというか、娘が通っている保育園でも、保護者の私に対する反応が、自分が小さかった時と比較して全然違うんですよね。もちろん、子どもたちも変わってきたなと感じます。
――保護者の変化が、子どもたちにも影響している?
佐野 間違いないと思います。昔の大人って、「見ちゃダメなもの」って目をそらすか、「あの人はかわいそうだね」みたいな反応だったんです。
だけど今は、「なんであの人、手がないの?」って子どもが聞くと、「◯◯くんだって生まれつきおっぱいないでしょ。それと一緒だよ」みたいな感じで、ちゃんと説明してくれたりしてて。
そうやって、周りにいる大人がちゃんと受け止めていると、子どもも「怖い」とかって言わないんですよね。今では、電動車椅子のことを「かっこいい」とか「僕も乗りたい」とか、そんな言葉をかけられるようにまでなりました(笑)。
障害者自身が発信しないと、世の中は変わらない
――佐野さんは『24時間テレビ』などでも障害について発信しています。
佐野 出してもらっている立場で恐縮ですけど、いくら『24時間テレビ』に障害者を出しても社会が大きく変わることはなくて、普段やっている番組にも普通に障害を持った人が出ることで、変わるんじゃないかな、と思っていて。
あと、厳しい言い方になりますけど、障害を持った人自身も、自然と理解してもらおうと思ってちゃ駄目なんじゃないかと思うんです。
講演会とかで、「私はあなたと同じ障害者なんで、仲間ですね」と声をかけられることがあるんですけど、「いや、私は仲間じゃないです」と。自分には何ができて、どんな助けが必要か、こちらから発信しなければわからないから、簡単に一般の人と距離を置くような線引きを自らしたくないんです。
だから私も、娘の保育園なんかでは明るく自分から話しかけるようにしていますし、「差別や偏見をなくそう」と言うなら、自ら発信していくことからはじめませんか?って思ってるんです。
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