「障害者が子どもを産むな」「産んだことが虐待」と言われ……

――佐野さんが子育てしていることについて、SNSで心無い言葉を発する人もいます。

佐野 私の育児動画がXで拡散された結果、「障害者なのに子ども産むな」「産んだことがもう虐待」「社会に出たらいじめにあう」といった書き込みが押し寄せて。

 四肢欠損というだけで、「自分のこともできないのに、子どもを作るなんて意味が分からない」と言われがちなんですよね。

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――実際には、一人でできることもたくさんあるのに。

佐野 だから、自分ができることや、逆に助けが欲しいことも、もっと発信していこうと思ってるんです。

 まあ、誹謗中傷を書き込むような人にとっては、「だから何?」って感じかもしれませんけど、もうそこは気にしないでいこうと思っています。

自宅で子どもと遊ぶ佐野さん

――現在5歳のお子さんから、佐野さんの障害について聞かれることはありますか。

佐野 子どものお友だちからは、「なんで手がないの? 足がないの?」と聞かれることはあったんですけど、娘からはストレートに聞かれたことは一度もなくて。なんなら、「ママの足は手なんだよね」という感じで、彼女なりに理解してくれていて、ありがたいなと思ってたんです。

 ただ、イヤイヤ期の時期に、「口でやるのはやめて」と言われてハッとしたことがあって。

――佐野さんは足に加えて、口も使いながらいろいろと作業をするんですよね。

佐野 そうですね。その時は、口で布団をかけ直そうとしたんですけど、「汚い、口ではやめて」と言われたんです。

 私にとっては手のような感じで口を使っていたけど、普通に考えたらたしかに汚いよね、と。自分中心で物事を見ていたことに気付かされて、それからは「これは口を使うけどいい?」とかって聞くようにしています。

義手・義足を試したこともあったが、すぐにやめた

――佐野さんが小さいときは、今以上に差別や偏見がかなりあったそうですが、社会の変化を感じる瞬間はありますか。

佐野 昔は「一般の人」と「障害者」が明確に分けられていて、「障害者=かわいそうな人」と、障害者を見下すような時代だったと思うんです。周りの人からも「大変だね」って言われることが多くて、小学生の時に義手・義足を作ってもらったことがありました。

義手だけで数キロの重さがあり、負担が大きかった

――今も使うことはあるんですか?

佐野 いや、すぐにやめちゃいました。私の将来を案じた両親が作ってくれたんですけど、当時は一通りのことが自分でできたので、「足でできるのに、なんで今さら手を使う練習するんだろう?」みたいな感じだったんですよね。そもそも義手だけで2~3キロあったので、つけてるだけでもかなり大変でした。

 それで最終的には両親も、「有美はこのままが良かったんだね、ごめんね」という感じになって、義手も義足も2年くらいでやめちゃいました。