広島の強豪・広陵高校野球部で発生した、当時1年生の部員・A君が、複数の先輩部員からの暴行を受けた事件。この事件を受けて広陵高校は夏の甲子園2回戦を前に出場を辞退したが、A君の父親から相談を受けていたノンフィクションライターの柳川悠二氏が、事件の一部始終を明らかにした。

事件の相談をしたA君に対しては、中井哲之監督(当時)の指導者としての“あるまじき言動”も目立ったという。

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「出されては困ります」やろ

 監督 高野連に報告した方がいいと思うか?
 A君 はい。
 監督 2年生の対外試合がなくなってもいいんか?
 A君 ダメだと思います。
 監督 じゃあどうするんや。
 A君 出さない方がいいと思います。
 監督 他人事みたいに……じゃあ何て言うんじゃ。「出されては困ります」やろ。
 A君 はい。

 当初、中井監督はA君に寄り添い、これから一緒に頑張ろうと優しい言葉をかけていたという。野球部という組織で動く以上、規則を破ることや寮を出ることが、多くの方面に多大な影響を与えてしまうことを自覚してもらいたかった、と監督は学校に説明したようだ。

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中井哲之監督は「2年生の対外試合がなくなってもいいんか?」と迫ったという Ⓒ時事通信社

 だが実際には、日本高野連から下されるであろう対外試合禁止処分が、まるでA君の責任であるかのように巧妙に誘導している。

 この会話は、A君の両親が学校に送った質問状に対し、惇一部長が作成した回答書から抜粋したもので、惇一部長は「中井監督、広陵高校校長の確認を経ている」とA君家族に説明していたという(学校は監督とA君との間で「このとおりのやりとりがあったとは判断しておりません」と回答)。