〈A君は複数の先輩部員から殴る蹴るの暴行を受けた。1月22日には2年生の先輩部員から呼び出されて、こんな言葉を投げかけられている。
「本当に反省しているのか? 反省しているなら便器舐めろ。◯◯(部員名)のちんこ舐めろ」
さらに正座を強要されたA君は腹部を殴られる。腕でかばおうとすると、先輩に「正座の時の手はどこにするんや? 後ろやろ?」と言われ、少なくとも4名の先輩から腹を殴られ続けた〉
春夏合わせて甲子園出場53回を誇る広島の強豪・広陵高校野球部で、今年1月に当時1年生だったA君は、複数の先輩部員から暴行を受けた。原因は、寮で禁止されているカップラーメンをA君が食べたからだった。
A君の父親から相談を受けていたノンフィクションライターの柳川悠二氏は、「文藝春秋」10月号(9月10日発売)に寄稿したレポートで、暴力事件の一部始終を上記のとおり詳述している。さらに、A君に対する中井哲之監督(当時)の指導者としてあるまじき言動についても詳らかにしている。
大会史上初の不祥事による出場途中での辞退
この暴力事件によって広陵高校は、出場していた第107回全国高校野球選手権大会を2回戦を前にして出場辞退を決めた。不祥事によって出場途中で辞退するのは大会史上初だ。そして、中井監督と、その長男である野球部部長の中井惇一氏が更迭された。
中井監督は同高校の理事にして副校長。そして、甲子園では春優勝2回、夏準優勝2回の実績がある。さらに、これまで約30人のプロ野球選手を育て、“名将”とも呼ばれる存在だったが、A君への暴行事件の対応では、にわかには信じがたい“ウラの顔”を露わにしていた。

