平成という“異様だけどエネルギッシュ”な私の青春時代
――さまざまな激しいテーマを扱いながらも、本作は不思議と軽やかに、スイスイ読めてしまいます。随所に散りばめられたユーモアがその理由のひとつかと思うのですが、「笑い」は意識されていましたか?
綿矢 今回の小説は、あんまり笑いを意識はしていなかったんです。でも、主人公の久乃が真面目だけど突っ走るタイプの性格なので、笑いを入れようと思わなくても、だんだん笑えてくるような場面が時々あって。真面目すぎる人を書いても、逆にちょっと笑えるようなことが起こってしまうんだな、というのに今回初めて気づきました。
――第一部は90年代後半から2000年頃の中学校が舞台で、綿矢さんご自身の時代とも重なります。綿矢さんにとって、中学時代はどんな3年間でしたか。
綿矢 人生の中で一番よく記憶が鮮明に残ってる時代ですし、毎日がすごく新鮮でした。私にとっての青春って中学時代だったのかなって思うぐらい、みずみずしかったです。
――当時はコムロファミリーが活躍し、女子高生ブームがあったりと、特別な時代でした。
綿矢 私にとってもすごく変わっていて、異様だけど、すごくエネルギッシュだった特別な時代です。J-POPの影響もあったかもしれないですけど、その時代は女子高生に価値があったから、中学生の私は言いようのない焦りを感じていて。「女子高生が終わった後、自分の価値はなくなるのか」とか考えたりもして。今から振り返ると、なぜそんなに刹那的だったんだろうって思うほど、焦っていた気がします。高校生のうちに小説を書こうって思ったのも、その影響かもしれません。
