作者も意識していなかった結末はハッピーエンドなのか?

――連載時は漢字四文字の『激煌短命』だったタイトルを、単行本化にあたっては『激しく煌めく短い命』に変更された理由は?

綿矢 連載時から、作中のどこかで「激しく煌めく短い命」という言葉を出そうと決めていました。四字熟語の『激煌短命』というタイトルも気に入っていたんですけど、単行本にするにあたって色々直しているうちに、できるだけクリアにしたい、伝えたいことをひねらずにそのまま言葉に込めたい、という気持ちが強くなってきたんです。それで、『激しく煌めく短い命』の方が頭に入ってきやすいかなと思いました。

――さらに意外なエンディングは、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、読者の間でも意見が分かれそうです。この結末は最初から考えていたのでしょうか。

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綿矢 いえ、最初のうちはどうするか考えずに書いていったので、ラストは本当にこの登場人物の二人の決断、みたいなものが出たっていう感じです。自分であんまり意識してこのラストに持って行ったという気持ちはなかったですね。できるだけ幸せになってほしいという気持ちでは書いていたんですけど、私も最後までこうなるっていうことは意識せずに書いていました。

文藝春秋PLUS公式チャンネルの収録風景

――まさに、作者も読者も、小説を通じて自分の知らなかった地平に到達できるという、長編小説の醍醐味が詰まっていますね。最後に、この本をどんな方に読んでいただきたいですか?

綿矢 日々、今日という日に適応するために精一杯で、過去を懐かしく思い出す瞬間が取れてない人も多いと思うんです。忘れ去ったままでいる中学時代や高校時代を、本を読んで思い出すことで、もう一度その時代に戻れたような感覚になってもらえたら、書いた方としてはすごく嬉しいです。平成時代っていうものをもう一度思い出してみたいとか、振り返ってみたいっていう気持ちがちょっとある大人の人に読んでもらえるのも嬉しいなって思います。

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 人生の甘さと苦さがすべて詰まった、熱い恋愛小説『激しく煌めく短い命』。640ページという分厚さながら、一度読み始めると止まらないドライブ感で、読者は久乃と綸の人生を追体験することになります。懐かしくて新しい平成の空気とともに、圧巻の読書体験をぜひ味わってみてください。

※こちらのインタビューは文藝春秋PLUS公式チャンネルにて動画でもご覧いただけます。

激しく煌めく短い命

綿矢 りさ

文藝春秋

2025年8月25日 発売

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