貨物列車のために作られた「レールがない駅」とは

 貨物列車は基本的にJR旅客会社の線路を借り、線路使用料を払って走っている。これは国鉄を分割民営化したときに、貨物列車サービスを全国的に展開しようとしたからだ。その結果、現在JR貨物が保有する線路は港や貨物駅とJR旅客会社を連絡する路線だけ。全国で9路線、営業距離の合計は約30キロしかない。

 しかし、JR旅客会社の線路をすべて借りているわけではない。鉄道輸送の特長は大量輸送にあるから、主要幹線だけ走っており、貨物の需要が少ないところは走らない。国鉄時代はローカル線の小さな駅にも車扱の貨車が1台くらいあって、それをつないでいく貨物列車があった。しかし、貨車1台のために機関車を動かすとはあまりにも非効率だ。

 そこで、輸送量の小さな区間は貨物列車の運行をやめて、トラック輸送に切り替えていった。赤字のローカル線を廃止して、旅客列車をバスに転換するように、貨物列車をトラックに転換した。トラックは地元の運送社や通運会社が引き受けて貨物駅まで往復する場合もあるし、一定の需要がある地域はJR貨物が集配施設を設置して、貨物列車に接続する定期トラック便を運行している。

ADVERTISEMENT

 この集配施設を「オフレールステーション」という。「レールがない駅」という意味で、言い得て妙である。運送会社と異なる点は、オフレールステーションから貨物駅までのトラック輸送も、貨物列車と見なして運賃やダイヤを設定していることだ。これも旅客列車の代行バスに似た施策だ。

 JR貨物は全国的な貨物輸送を担っているけれども、貨物列車だけではなく、末端はオフレールステーションになっている場合がある。ローカル輸送の末端は私鉄や臨海鉄道、あるいは運送会社のトラックが担っているというわけだ。

JR貨物が運行する主な鉄道路線と、主なオフレールステーション(地理院地図を元に筆者加工)

じつは新宿駅も貨物列車が通っている

 2025年3月のダイヤ改正以降、JR貨物は1日当たり393本の貨物列車を運行し、全国の主要都市を結んでいる。東京周辺は大消費地であり工業生産地でもあるから、日本中から東京を目指して貨物列車がやってきて、東京から全国各地に向けて貨物列車が出発していく。しかし、地方都市ではコンテナ列車を見かけるし、在来線の車窓から貨物駅も見える一方で東京都心で暮らし、働く人にとって、貨物列車を目撃する機会は少ない。

 その理由は主に2つある。「時間帯」と「客貨分離」だ。

 まず東京都心は旅客列車が過密になっているため、旅客と貨物それぞれの列車が走る時間帯を分けている。