特急停車駅らしからぬ風景が…

 目の前に地域の文化センターがあって、出口の脇にはコンビニがあって、とこのあたりはまずまず立派。

 が、それ以外にはロータリーのようなものもなければ商店街や繁華街の類いも見られない。出口がそのまま生活道路に面するような、住宅地の中の駅なのだ。

 

 ならば近鉄側が、と思って駅の東に出てみても事情はまったく変わらない。というか、むしろ東側の方こそコンビニすらないまったく紛れもない住宅地そのものだ。

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 それどころか、ふたつの丹波橋駅に挟まれた100mほどの一帯も似たような町並みが続く。

 この駅前風景を見せられて、いったい誰が特急列車まで停車するほどの主要駅だと信じられようか。

 
 

 とどのつまり、丹波橋駅は周囲に繁華街などを抱えるターミナルというよりは、ただ単に“乗り換えの便”に特化した駅なのである。

駅名の由来となった“丹波橋”

 もう少しばかり、駅の周辺を歩いてみよう。

 近鉄側の住宅地は、東に向かってなだらかな登り坂になっている。住宅地の中を抜けてゆくと国道24号とぶつかり、その向こうにはJR奈良線が走る。

 

 さらに奥には明治天皇の御陵もある桃山丘陵だ。ただし、クルマがひっきりなしに行き交う国道を除けばあとは賑やかさとはまったく無縁な静かな住宅地に過ぎない。

 

 反対に京阪側はどうだろう。

 駅の北にある踏切道はその名も「丹波橋通」と名付けられ、商店街というには心許ないものの、いくらかの賑わいが感じられる。

 この丹波橋通をずっと西に歩いてゆけば、10分ほどで小さな川を渡る。この橋の名が、丹波橋。駅名の由来になった、由緒正しき橋である。

 

 ところが、ここでなぜこの橋の名が丹波橋なのか、という新たな問題が浮上する。そもそも丹波とは、現在の京都府中部と兵庫県の一部などに跨がる旧国名。

 その名前が京都市街地の郊外たるこの場所にあるのは、いったいどういうわけなのか。