秋は、京都の季節である。……といっても、紅葉が映える観光都市としての京都ではなく、競馬のお話だ。
秋の京都競馬場では、3歳牝馬三冠最後のレースである秋華賞を皮切りに、菊花賞やエリザベス女王杯、マイルチャンピオンシップとG1レースが目白押し。秋は競馬を愛する人たちが京都に集う季節なのである。
そんな京都競馬場の最寄り駅は、京阪の淀駅だ。競馬に関心がなければ聞いたこともないかもしれぬ。おおざっぱにいえば京都市の南端、桂川と宇治川が合流して淀川に名を変えるその近く。実質的に速達列車はほぼ停まらない小さな駅だ。それが競馬開催日にはまったく違った姿を見せるのだから、おもしろい。
……と、そんな話をしたところで、今回の目的地は淀駅ではなくてその手前、丹波橋駅である。
ナゾの駅「丹波橋」には何がある?
何しろ淀駅というのはいささかちっぽけな駅なので、遠方から京都競馬場を訪れようとするとやや手間がかかる。
京都駅で新幹線を降りて近鉄に乗り換え、丹波橋駅で京阪に乗り換えて。たった30分ほどだし地元の人は慣れっこなのだろうが、不慣れだとちょっと戸惑う。
行きははやる気持ちを抑えつつ、帰りは軽くなった財布に悔恨の念。そんな思いを抱いて歩く、丹波橋駅の近鉄・京阪連絡通路。駅の外に出ることなどはないから、存在感こそ大きくともどんな駅なのかは皆目わからない。
近鉄と京阪という、関西私鉄の2路線が交差する唯一のターミナルでもあるこの駅を、今回は歩いてみようと思う。
丹波橋駅があるのは、京都の市街地の南側。近鉄で言うならば、京都駅から東寺の五重塔を横目に南に進んで鴨川を渡って名神高速と交差、そこからさらに少し南下したところが丹波橋駅だ。
京都駅からの所要時間はざっと10分ちょっとの駅である。


