舞台、映画、ドラマと幅広く硬軟さまざまな役を演じ続け、今年初夏には「演劇の原点を辿るような」ひとり芝居『ヨナ-Jonah』にて、東欧4カ国6都市ツアーをおこなった佐々木蔵之介さん。10月1日からの国内ツアーを目前に、実家の造り酒屋の後継を考えていた10代の頃の演劇との出会い、さらにその源泉を伺った。(全3回の1回目/続きを読む)

佐々木蔵之介さん

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演劇との最初の出会い

――生まれも育ちも京都という佐々木さんですが、演劇の世界に入られたのは神戸大学に入学されたとき、たまたま演劇サークルに勧誘されたことがきっかけとか。演劇との最初の出会いはそこですか?

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佐々木蔵之介さん(以下、佐々木) 演劇を始めたのはそこですね。

――その前も、演劇には触れていらしたのでしょうか。

佐々木 いくつか予兆はあったと思うんですが、高校生のとき、大学の図書館で受験勉強をしていたら、外で声出しをやっていたんですよ。演劇部でしょうね、学生たちが稽古をやっていたんです。しばらくすると、図書館員のかたに「みんな勉強してるから違うところでやりなさい」と注意されて静かになったのですが、ああ、大学生になったら自由にこういうことができるんだろうなあって。

 そのあと、僕は東京の大学に進学して、1年後に関西に戻ってくるという春休みに、安藤忠雄建築の「下町唐座」という劇場に、唐十郎さんの舞台を観に行ったんですよ。当時一緒に住んでいた兄が建築を専攻していて、「面白い舞台(建築)があるよ」って誘われて。いまから思えば柄本(明)さんとか、唐組のみなさんも出ていらっしゃる公演だったのですが、とりあえず当日券を買って、ストーリーもよく理解できないまま、でもとにかく凄いものを観た。渦巻くエネルギーのようなものに飲み込まれた演劇体験をしました。

 

 舞台の中央にプールのようなものがあって、そのプールの奥にある大きな壁が最後にばーんと開いて、(唐さんたちが)隅田川に流されていくんですけど、一体なんなんだ?! それまでそういうタイプの演劇を観ていなかったものですから、すごいスペクタクルを観たような記憶があります。ただそういう経験があったなというだけで、演劇をやろうと思ったわけでもなんでもないんですけど。

――はい。