「舞台に立ち続けられる状態に自分を置いておかないと」。ドラマや映画でどんなに注目されても“板の上”から降りないという佐々木蔵之介さんのルーツは演劇。ひとり芝居『ヨナ-Jonah』で初の海外ツアーをおこない、10月1日から国内各地での公演を控える佐々木さんの、約2カ月間にわたる東欧生活での気づき、故郷への想い、その目線の先にあるものは。(全3回の3回目/最初から読む)
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「舞台の稽古の場合は、毎日ダメをもらいに行く」
――会社をお辞めになって、“芝居”の道を進まれて、映画やドラマで活躍されるようになっても、佐々木さんから舞台が離れていった時期はないように感じます。その吸引力はどこにあると思われますか?
佐々木蔵之介さん(以下、佐々木) 自分の出自が演劇サークルなので、舞台に立ち続けられる状態に自分を置いておかないと、となんとなく思っているんですよね。体力的な面で、舞台はきつい、しんどいなあと思ってしまうので。「舞台楽しい!」「ルーティンがあるからいい」という声をわりとまわりから聞くんですが、えっ、そうなん? くるしいやん? と思ってしまうんです。やっぱり全身をずっと使っていくから。
――年齢とともに、体力的な負荷が増えていく実感はありますか。
佐々木 自分のなかで、体力測定みたいなところはありますね。知能テストみたいなところもあります。どれだけこの作品を読み切れるのかっていう知能テスト。
――それは映像作品にはあまりないものですか。
佐々木 もちろん映像にもありますし、“演じる”という部分は一緒です。ただ映像作品の場合は現場にオッケーをもらいに行くんですけど、稽古場はダメをもらいに行くんですよね。そこは、ぜんぜん違う。
現場でオッケーをもらったら、あーよかった、となって帰る。それでもう二度とそのシーンの撮影はやりません。一方で舞台の稽古の場合は、毎日ダメをもらいに行く。ずーっとダメをもらって、一度もオッケーはなく、千秋楽を迎えるという話ですよね。毎日芝居について考えていかなければいけなくて、昨日はできたけど、今日できるか、次またできるかわからない。稽古期間から千秋楽まで、ずっとそこ(作品)と向き合っていくことが、やっぱり大切なのかなと。なによりもその時間が大切なのかな、なにかに向き合って考え続けていくという。そこですねえ、僕が演劇を続けているのは。
――そこが、魅力?
佐々木 ぜんぜん魅力じゃない。
