「存在を知った以上、誰にも話してはいけない。口外した者は家族ごと皆殺しにされる。警察に言ってもムダだ。警察の上層部はヤクザとつながっていて、組織の人間が捕まることもないし、捕まってもすぐ出てこられる」

 被害者の数はわかるだけでも27人、6年間性奴隷のように扱われた女性も……「ヤクザの復讐組織」をかたって、女性たちを騙し続けた犯人の悪質手口とは? 2014(平成26)年におきた事件の概要をお届け。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/後編を読む

写真はイメージ ©getty

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「ヤクザの復讐組織」をかたる27人連続暴行魔

 被害者の1人である布施純子さん(当時24)が地獄に陥ったのは6年前――18歳のときに職場にかかってきた1本の電話がきっかけだった。

「布施さん、炊飯器を買ったというお客様から電話が入ってますよ」

 純子さんは高校卒業後、家電ショップに就職し、勤務してからまだ1カ月も経たない新人だった。

「ハイ、お電話代わりました」

 すると受話器の向こうから聞こえてきたのは野太い男の声だった。

「ブラックオールの金沢ってモンや。ブラックオールって知ってるか?」

「知らないです」

「暴力団から依頼されて復讐する専門組織や。あんたをムチャクチャにしてビデオに撮って欲しいという依頼があった。こちらとしても金を受け取っている以上、実行しなければならない。でも、依頼主がウソを言ってるかもしれないから、こうして確認の電話をしてるんや」

 純子さんにはまったく心当たりがなかった。だが、男の脅迫的な話はまだ続いた。

「ブラックオールの存在を知った以上、誰にも話してはいけない。口外した者は家族ごと皆殺しにされる。警察に言ってもムダだ。警察の上層部はヤクザとつながっていて、組織の人間が捕まることもないし、捕まってもすぐ出てこられる」

 社会経験が少なかった純子さんは「あり得る話かもしれない……」と信じてしまった。男に「身辺調査の確認をするから、正直に答えろ」と言われ、経験人数や彼氏の有無、スリーサイズ、携帯番号などを答えさせられた。