「レスラーたちも、みんなうすうす気づいてはいるんだ。スクワットは無駄な行為であり、縦社会の負の遺産だということを。なのになぜ続いているのか? 3パターン考えられる」
トレーニングとしての効果は薄い……それにもかかわらず、なぜプロレス業界では「若手にスクワットをさせる」のか? 前編では、人気レスラーOZAWA(28)がその理由を紐解く――。プロレス界のレジェンドOBから現役選手まで、さまざまなレスラーに「道場論」について直撃した、新刊『逆説のプロレス(25)』(双葉社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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“理不尽”だったノアの合宿所
――OZAWA選手は今も道場で練習をされているんですか?
OZAWA 俺が道場に? いやいや、俺はスロットを打つので忙しいんだよ。毎朝9時半の抽選に間に合わなきゃいけないんで、道場に行ってるヒマなんてないだろう。
――では、その整ったボディはいかにして保たれているんですか?
OZAWA いかにして? いや、マジな話、筋トレはほとんどやってないから。この肉体をキープできてるのは才能としか言いようがないんだよな。食事も袋ラーメンを毎日食べてるくらいまったく気を使っていないしな。だからまあ、現状維持っていうだけで成長はないんだけどな。
――ノアには道場だけでなく合宿所もありますよね?
OZAWA 合宿所は道場とは別の場所にあって、俺も練習生時代はそこにいたんだが、デビューするまでは外出禁止だったな。
――外出禁止ということは、道場と合宿所の往復の時だけ外の空気を吸うことが許されると?
OZAWA そう。時代錯誤も甚だしかった。だからデビューしたあとは外出している時間が束の間の幸せだったんだ。それがある日、道場長だった某・清宮海斗から突然連絡が来て、「○○○(某・外国人レスラー)が体調を崩してるから病院に連れていってくれ」って言われたんだ。でも俺はその日ちょうど休みで外出していたから「ちょっといますぐには戻れないです。1時間後くらいになりそうです」って返事したら、清宮海斗が「じゃあ、いいや。俺が連れていくから」って言うから俺は安心してたんだ。そうしたらその日の夜にまた連絡が来て「お前は明日から外出禁止な」と。どうだ、とんでもない業界だろ? 本当に信じられない。
――それはさすがに理不尽ですね。ノアの場合、プロデビューはどのようにして決まるんですか?
OZAWA 俺の頃はコーチも清宮海斗がやっていて、受け身かをひと通り習わせて、いけそうだと清宮海斗が判断したら上に報告をして、だいたい1カ月前くらいにデビュー戦の日が告げられる。自前のコスチュームやリングシューズをつくったりしなきゃいけないから、最低でも1カ月くらいは時間が必要ってことなんだろう。
デビューしてからも“地獄だった”
――OZAWA選手もデビューが決まった時は、嬉しかったですよね?
OZAWA 「やっとこの地獄から解放されるんだな」という意味では喜びがあった。しかしデビューしてからも地獄だった。練習生時代と状況はなんにも変わらず、ただ試合もやる練習生というだけ。なんなら、ろくに試合も組まれなかったしな。だから当時は、プロレス業界、プロレスラーという職業はこんなにつまらないものかと俺はかなりショックを受けていたんだ。
本当にクソつまらなかった。練習生の時からずっと抑圧されていて、デビューしてからも抑圧され続ける。試合中もつまらないから新しいストレスが生まれるんだ。
――試合中もつまらない?
