番組の制作統括・倉崎憲は原の印象をこう語っている。

「グループオーディションにおける自己紹介の時、周りの人からどう言われますかという質問に『サムライです』と言ったんです。『ストイックだからかと思います』みたいな理由で。それが面白いなぁと思いました。いわゆる朝ドラヒロイン、ザ・朝ドラヒロインみたいな明るくて天真爛漫なところは、原さんが3365人の中、圧倒的で、朝ドラにはひとりはこういう人がいてほしいという存在です。実際、現場も彼女がいると明るくなりますし、芝居も達者で、天真爛漫でみんなに愛されるようなメイコのキャラクターにぴったりでした」

 

(出典:ダイヤモンドオンライン『くら(浅田美代子)の「銀幕の向こうに行ってみとうなってね」…まさか“第18回の一言”が伏線だった!【あんぱん第69回レビュー】』2025年7月3日)

 原が思う朝ドラの主要人物に必要とされることは「爽やかさ」と「毎朝見ていても飽きない」こと。「毎日顔を見るのが楽しみと思うような人なのかなと思っています」とインタビューで語っていた(出典:ダイヤモンドオンライン『「自分の声が嫌いだった」原菜乃華が“ご機嫌な人間”を演じきるまでに起きたこと【朝ドラ『あんぱん』】』2025年7月17日)。

メイコ 『あんぱん』公式Xより

高校生から中年女性まで…驚くべき演じ分け

 朝に欠かせない炊きたての白米のようなメイコ。だが戦後になったとき、自分が最もきれいで輝くはずの青春時代が戦時中にあたり、おしゃれも恋も夢を見ることも何もできなかったと嘆く。防空壕ばかり掘っていた悔いを、取り戻すために『NHKのど自慢』に挑戦しようと東京に行こうとする。

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 結局、『のど自慢』の夢はあっけなく潰えるのだが、その代わり、初恋の人・健太郎(高橋文哉)と結婚し、ふたりの娘を授かる。そうすると、生活にまみれていき、専業主婦の悩みを抱えたり、噂話に目がなかったりと、炊きたて白米ではなく、一晩寝かせたカレーのような時間の経った味わいを醸し出していく(夫の健太郎のモデルはカレーパンマンだ)。

 そこで目を瞠るべきは、原の中年女性の再現度の確かさである。同時期に他局で放送されていた連続ドラマ『ちはやふる‐めぐり‐』(日本テレビ)の高校2年生の月浦凪役との演じ分けのあまりの違いに驚嘆した。

メイコ 『あんぱん』公式Xより

 高校の制服を着ているときの原の“絶対領域”(スカートとハイソックスの間)の瑞々しさと『あんぱん』終盤の、落ち着いてやや貫禄が出た主婦姿(40〜50代くらい)の差。当人は2003年8月生まれで現在、22歳だから凪のほうが断然近いだろう。それを、衣装やヘアメイクが助けているとはいえ、それらに依存しきることなく、土台から変えているように見える。姿勢が変われば心も変わるというように、自分の身体を適切な年齢に作り込んでいるようなのだ。

 つまり、朝ドラヒロインのようなピュアさや天真爛漫さも、原の巧妙な演技によるものなのではないだろうか。本人がピュアじゃないという意味ではなく、ピュアの公的イメージを表現する才能に長けているという意味だ。いったいこの才能、どこで身につけたのだろうか。