やなせたかしとその妻・小松暢をモデルにした朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)がクライマックスを迎えようとしている。
9月8日から9月12日にかけて放送された第24週では、ついに北村匠海演じる嵩がずっと描きたかった絵本『あんぱんまん』が発売された。
売れ行きは芳しくなかったが、今田美桜演じる主人公・のぶの地道な読み聞かせの力もあり、子どもたちには自分の顔を食べさせて人を助けるアンパンマンの物語が徐々に浸透。嵩の盟友であるたくや(大森元貴)は、嵩の描いた『怪傑アンパンマン』をミュージカルにしようと提案してきた。
ずっと“逆転しない正義”を具現化したキャラクターの構想を温めてきた嵩の強い思いが、少しずつ形となりつつある。
姉2人と違う道を行く“メイコの物語”
そんなアンパンマンの誕生が本作の大きなテーマであるのは間違いないが、筆者がとりわけ胸を打たれたのは、別のキャラクターの物語だった。それは原菜乃華が演じる、のぶの末妹・メイコである。
幼い頃から天真爛漫で家族の中心におり、可愛がられていたメイコは、歌うことが好きな少女に育ち、実家である朝田パンの手伝いをしていた時は歌いながらアンパンを売り歩いていた。
メイコの歌はたびたび、人との縁を繋ぐ重要な役割を果たしてきた。戦争が始まり、のぶの家で石工として働いていた豪(細田佳央太)が出征した頃、のぶと嵩は電話でのけんかがきっかけで気まずくなり、互いを避けるようになる。そこでメイコは、御免与町を訪れた嵩の親友の健太郎(高橋文哉)とともに、仲直りをさせるための作戦を立てた。
のぶ、嵩、健太郎、メイコ、そして嵩の弟・千尋(中沢元紀)が海に集い、それぞれの思いを語りながら、のぶと嵩は仲直りをする。その過程で、メイコが健太郎のギターにあわせて「椰子の実」を歌唱するシーンは、戦争が激化する時代の中で、束の間の平和を象徴するような場面だった。
