対策1 体を洗うのは手で十分!

 入浴時にナイロンタオルでごしごしとこすったり、あかすりや乾布摩擦などで過剰に皮膚を刺激すると、薄い角層はたやすく傷ついてしまいます。体を洗うときは、石鹸をよく泡立て、手のひらでさっと洗うだけで十分です。角層は放っておいても最終的に垢となって皮膚から剥がれ落ちます。私も基本的には泡で洗い、背中などどうしても手が届かない場所は綿素材などの柔らかいボディタオルで洗っています。

 ただし、脇や股やお尻、耳の中などアポクリン腺が存在する部位から出た汗は、体表の細菌が代謝するときに強い匂いを発します。皮脂腺が発達した耳の後ろからも、いわゆる加齢臭といわれる匂いが出やすいため、こうした部分はややしっかりと洗っておくとよいでしょう。できるなら、弱酸性の洗浄料(ボディウォッシュ等)をお勧めします。私たちの肌は弱酸性を保つことで、黄色ブドウ球菌といった皮膚に常在する悪玉菌の増殖を防いでいるからです。

 ちなみに、温泉の成分も弱酸性のほうが皮膚に優しいといえます。アルカリ性が強い温泉は、入浴後に肌がつるつるになりますが、それはアルカリ性の成分で皮膚の角層がゆるやかに溶けているからです。アルカリ性の塩素系漂白剤を使ったときに手がヌルヌルするのと同じことで、繰り返すと皮膚のバリア機能を弱め、皮膚の悪玉菌を増やすことに繋がります。アルカリ性の温泉は、肌の負担にならない程度に楽しむのがいいでしょう。

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対策2 脱ドライスキン! 入浴後は必ず潤す

 皮脂は弱酸性の脂肪酸となり、皮膚に付いた細菌やウイルスにダメージを与えます。ただ、加齢とともに皮脂の分泌は減り、バリア機能そのものも低下していきます。

脱ドライスキン! 入浴後は必ず潤したい(写真はイメージ) Ⓒアフロ

 分泌量は男女とも思春期から20代にピークを迎えますが、男性は以後も高めに推移します。また、女性は特に更年期以降に低下していきます。小児の頃にひどかったアトピーが思春期に良くなることが多いのは、男性ホルモンの作用で皮脂の分泌量が増え、バリア機能が高まるからです。対して高齢者にドライスキンの人が多いのは、男性ホルモンの減少によって皮脂の分泌量が低下するためです。

※残りの6項目を含む、本記事の全文(約12000字)は、「文藝春秋」2025年10月号と、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(椛島健治「最高のスキンケア 『昔と変わらない』と言われるための8つのメソッド」)。
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