「クレヨンしんちゃん」の格好でホストクラブに飛び込み営業
――ということは、本名・加藤めぐみとしてフリーランスで活動を始めたのですか?
冬休み そうなの。仕事を斡旋してくれるおじいさんがいたんですけど、その人が、全国各地のキャバクラとかスナックに口を利いてくれて、ドサ回りするようになったんです。おじいさんはぜんぜんお金を持っていない人だったから、3万円のギャラのうち2万5000円くらい持ってっちゃう(笑)。それで途中からは、私一人で飛び込み営業するようになりましたね。
あるとき、小倉にあるホストクラブで営業があったんですけど、お客さんが一人しかいなかった。だけど、仕事は仕事だから、50分のステージを2回やったんですね。まだ、病み上がりだから身体もむくんでいて、今のように坂本冬美さんを歌ったりもできない。私は、クレヨンしんちゃんの格好で、しんちゃんのものまねをし続けるというステージをしていたんですよ。そしたら、そのホストクラブのスタッフには、ガラが悪くて指のない人もいて。
――続きを聞くのが、ちょっと怖いですね……。
冬休み 私、クレヨンしんちゃんでしょ。だから、しんちゃんの声色で、「どうして、お指が1本足りないのォ~おにいさん?」って聞いたんです。そしたら、「金とかいろいろあんだよ」って。
――すべてが狂ってますね。
冬休み ただね、誰でも良いから笑ってくれるのがすごい楽しかった。芸をみていただいて、お金を頂けることは本当にありがたいことだと思った。今まで何もできなかったからね。だから、絶対に盛り上げようという気持ちが強かった。知名度もない、歌も歌えない、ネタもないけど、マンパワーだけでものすごい数の営業やりました。ひたすら、しんちゃんの格好で飛び込み営業して、盛り上がったらお金をいただく、盛り上がらなかったら1銭もいただかない。その繰り返し。キャバクラだと思って入ったお店が、風俗店だったこともあったなぁ。
――どうして、そこまでクレヨンしんちゃんにこだわったのですか? 松居直美さんのものまねで話題になったのに。しんちゃんのものまねって、言い方は悪いですけど、誰でもやろうと思えばできるじゃないですか。
冬休み なんかね……クレヨンしんちゃんが良かったの。ハマってた。しんちゃんって実在しないじゃないですか、その実写版を自分がやっている感覚が、自分でもすごいおかしくて。松居さんをやればキレイに笑いを取ることができたかもしれないけど、キレイに笑われることを望んでないんですよ、魂が。お客さんの「こいつバカじゃね?」って顔に、魂が震えるんです。

