「高齢者が分かることをやったらどうですか?」と言われて
――それで、30代前半の頃に、児童養護施設に住み込みとして働くように?
冬休み 住み込めるなら何でも良かったんだと思う。ただ、私はお父さんがいない家庭だったから、お父さんやお母さんがいない子どもたちの所に行ったら、気持ちが通じるものがあるのかなって。若い子は、これからが人生じゃないですか。どうしてるんだろうと思って。それで、千葉の山奥にある児童養護施設に行きました。ものすごいリストカットをしている子とか、まったく目を見れない子とかいましたよね。「芸人さんだったんだから芸をやってほしい」って施設長から言われて、しんちゃんとかサザエさんのものまねをしたんです。
最初はやっぱり抵抗がありますよ。笑ってくれない。でも、段々と笑ってくれるようになると、やっぱりものまねってすごいと思うようになったんですよ。
普通に加藤めぐみで行っても、「誰? 何?」って感じだけど、キャラクターだと受け入れてもらえる。その様子を見ていた施設長が、「提携している老人ホームがあるから、そこでもやってほしい」って言うんです。意気揚々と行ったら、ドン滑り。見事にウケない。ヤジもない。あれだけスベり倒したのは初めてだった(笑)。
――おじいちゃん、おばあちゃんはしんちゃんを知らないでしょうからね(笑)。
冬休み 申し訳なさそうに施設長が言うんですよ、私に。「無料で来ていただいて悪いんですけど、もっと高齢者が分かることをやったらどうですか?」って。
――ニーズに合わせろと。
冬休み 合わせろと。そんなことを言われると、やっぱり悔しいじゃないですか。それから、美空ひばりさんや坂本冬美さんの歌を本気で歌を練習するようになりました。しばらくして、同じ老人ホームを再訪する機会に恵まれたんです。美空ひばりさんの「川の流れのように」を歌って、おじいちゃんの手を握って、ひばりさんの声色で「おじいちゃん、長生きするのよ」って。
そのおじいちゃん、目が見えなくなっていて、手も動かなくなっていたらしいんです。だけど、ちょっとずつ手が開いて、最後は私の手をぐっと握ったんです。その握った手を、自分の股間にあてるんですよ。びっくりして、みんな泣き笑いです。職員さんたちもすごい感動してくれました。ものまねの力はすごいって確信しました。やっぱり私はこれをやりたいって。生まれ変わったつもりで、ものまねと向き合うようになりました。
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