オードリー そう考えています。実際、Xがコミュニティノート(誤解を招く可能性のある投稿に、他のユーザーが匿名で情報を追加できる機能)を導入するなど、試みはもう始まりつつあります。

拡散よりも「広く聞く」が大事

 SNSはブロードキャスティング(広く情報を配信すること)のプラットフォームです。これと反対に、幅広い声を集める「ブロードリスニング」の道具もデジタル技術で実現できます。そしてそれは、民主主義の可能性を知る上で非常に有用です。

 米ケンタッキー州のボーリンググリーン市は、25年間の長期都市計画を策定するに当たり、オンライン投票プラットフォームを活用しています。市民から募ったアイデアに対しオンラインで意見を集めたところ、人口7万人あまりのこの市で100万件以上もの膨大な意見が集まりました。それをAIで「どのアイデアが支持されているのか」を可視化すると、大多数が賛同する案が多数あることが分かったのです。

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Web3技術の ビジネスカンファレンス、 WebX2025の会場でインタビューを行った ©文藝春秋

 交通・医療インフラの改善や、新しく商業ビルを作らず既存の建築を活用することといった提案には圧倒的多数が賛同していました。一方で「みんなでロシア語を話そう」「道路に赤いカーペットを敷こう」といった極端なアイデアはまったく支持されていないことが一目瞭然でした。リポストがあるSNSでは極端な声があたかも大多数のように見えますが、実際には大多数が合意している領域がたくさんある。それを可視化できるのもデジタル・テクノロジーなのです。

※本記事の全文(約6500文字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(「《オードリー・タンが見た参政党の躍進》SNS政治では極論を回避できない。日本の『氏神』のようなAIが必要だ」)。全文では、以下の内容についても語られています。
・SNSの根本的な機能不全
・拡散よりも「広く聞く」が大事
・台湾と中国の決定的な違い
・「私か敵か」の二元論は超えられる

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