常連さんを取ったもん勝ちなので…
伊藤 ただその頃には東京ドームで買ってくれる常連さんもある程度できていたし、西武ドームの常連さんも私に会いにわざわざ東京ドームに来てくれていたので、ジュースがめっちゃ売れたんですよ。ジュースだけで250本。たぶん今も記録だと思います。
周りからは「やばくね?」「もうジュース専門の方が良くね?」みたいにまで言われました。それだけ売ったので、実力を認めてもらって改めてビールに戻りました。そこからは覚悟を決めてやりました。
――実力で認めさせているのがすごいですね。東京ドームは売り子の販売エリアが決まっていますが、どの辺りで売っていたんですか。
伊藤 オレンジシートという、外野の1個手前の巨人ファンしかいないエリアの1から7通路で売っていました。年間シートのお客さんしかいないエリアなんで、もう常連さんを取ったもん勝ちで、すごく競争が激しい場所でした。私はひまわりの花を頭に付けていたので「ひまわりちゃんで~す」とか言いながら覚えてもらってました。
――売り子さんが頭につけている花ですね。あれって先輩から代々受け継ぐんですよね。
伊藤 いや、私は受け継いでないんですよ。新人ってそもそも花をつけちゃいけないんですけど、私はひまわりをつけたくて。働いている会社でひまわりは誰もつけてなかったから「じゃあ、私がつけてもよくね?」と思ってつけてました。
――伊藤さん、ルールをどんどん壊していきますね(笑)。
伊藤 当時のことを考えると怖いぐらいルールを破ってましたね。喋り方も何ならため口レベルなんです。それを許してくれる人とか多かったんで「ねえ、ビール飲むよね?」みたいな感じで話しかけて、お客さんを増やしてました。
でも西武ドームではその売り方はよくても、東京ドームはダメなので、先輩から「押し売りはダメ」と怒られてました(苦笑)。
禁止のインスタアップでめちゃくちゃバズった
――伊藤さんはインスタグラムにアップした東京ドームで売り子として働く姿がバズって、一躍“可愛すぎるビールの売り子”として注目を集めます。
伊藤 実はあれも東京ドームの売り子のルールでは禁止されてたんですよ。売り子個人がSNSをやるのはOKなんですけど、売り子で働いている時の写真は絶対ダメなんです。
もともと、あのインスタの写真はお客さんに撮ってもらった写真なんですけど、めっちゃ盛れてたんですよ。それで「世界中に見せたい」「見てもらったら私も嬉しいし、お客さんも喜んでもらえる。いいことだらけじゃん」と思って、怒られるのを覚悟であげたんです。
そんなにバズらないだろうと思っていたら、めちゃくちゃバズっちゃって、フォロワーが1日で5000人とか増えました。
――それだけバズっちゃったら、当然働いている売り子の会社にもバレますよね。
伊藤 もう、超怒られました。載せた夜にはもうバズってたんですよ。で、次の日出勤したら無言で手招きされて「消して」って言われて。でも「ごめんなさい、今スマホ持ってなくて」と嘘をつきました(笑)。
だって、こんだけバズることないじゃないですか。その後も毎回「消して」「もうビールから降ろすよ」と言われるんですけど、どうしても消したくなくて、もう毎日怒られてました。

