ジャンプ・抱える・蹴るのフェーズに分解してドロップキックを練習
――そんな中で掴んだ今回のチャンスですが、役作りで何か準備はされましたか?
相澤 ドロップキックの殺し屋という役をいただいて、驚きました。その概念がなかったので、「ドロップキックマンって何だろう?」と(笑)。ワードが強烈すぎますよね。実はドロップキックをやったことがなかったんですが、きちんと必殺技だという迫力を出さなければいけない。1週間、練習しました。場所を借りて、ジャンプ、抱え込み、蹴る、というフェーズに分解して、少しずつステップアップしていきました。柔道をやっていたので受け身は大丈夫でしたね。
――劇中でドロップキックの威力を科学的に説明するセリフがあって非常に面白かったです。
相澤 ありがとうございます。あれは、僕が漫画の『バキ』を読んでいて、心臓震盪の話を思い出したんです。たとえば野球のボールが胸に当たると心臓が止まってしまうことがあるんですが、それは心拍と同じ0.02秒のタイミングで衝撃が加わると起きる、と。これをドロップキックに応用したら面白いんじゃないかと、撮影当日、阪元監督に提案させていただきました。
――相澤さんのアイデアだったんですね。撮影現場の雰囲気はどうでしたか?
相澤 すごく新鮮でしたし、役をいただいて現場に行くのが初めてだったので、もっと欲が出ましたね。一つの作品を作るのは本当に面白いなと。
自分にしかできない作品を作りたい
――ワールドプレミア上映をした大阪アジアン映画祭の舞台挨拶で、主演の松本卓也さんが生卵を飲むシーンがカットされたと話していました。
ドロップキックマン役の相澤隼人さんは、撮影中の思い出深いエピソードとして、トレーニングシーンの一幕を挙げた。
「生卵を飲むシーンがあったんですけど、松本さんがちょっと『おえっ』てなって、そこで(現場が)大爆笑になっちゃって。(映画に)使えなかったのはちょっと残念なんですけど、それが自分の中ではいい思い出です」と語り、笑いを誘った。「『ロッキー』へのオマージュをやろうとしたんですけど(笑)」と阪元監督。
相澤 そうそう。松本さんが生卵を飲んだら、黄身か白身が喉に「ゴッ」て入っちゃって。もう、とてもじゃないけど真面目に演技ができなくて、カットがかかった瞬間にみんなで大爆笑でした。現場の皆さんが温かくて、すごく良い雰囲気の中で撮影させていただきました。

