――感情をテーマにしているのはご自身の経験からですか。

てんてん そうですね。わたしはタトゥーを彫ることで生き延びることができたので。

 ある意味、死にたいという気持ちを身体にぶつけていたんですよね。こういうことって悪いことに思われるんですけど、わたしはそう思わなくて。

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 抱えきれない感情を持っている人にタトゥーを彫って、その人が少しでも長く生きてくれたらなと思っています。

タトゥーを入れた人への偏見は仕方がない

――全身にタトゥーを入れていて不便に感じることはありますか。

てんてん 予約していたホテルから断られたことがあります。賃貸契約を断られることもありました。

 不動産屋に行くと免許証などの身分証明書を提示しますよね。証明写真にもタトゥーが写っているので、「オーナーの意向で貸せる物件が限られるんですよ」と言われることもよくあります。

――これだけ全身にタトゥーを入れていると驚く人も多そうですよね。

てんてん 「すごいね」とか「写真撮っていい?」と言われることは多いです。見える場所にこれだけ入っているので、タトゥーを見慣れている海外の人にも驚かれることもあるんです。国によっては見える場所にはあまり入れないみたいで……。「後悔していないの?」と言われたこともあります。

全員にタトゥー(写真=本人提供)

 他には「親が悲しんでいるよ」とかもよく言われますが、スタジオに連れて行ってくれたのはお母さんなので。別に悲しんでいないんですよね。

 わたしはタトゥーを入れたことで生き延びられたので、後悔はありません。むしろよかったと思っています。もともとは「カッコいいな」という軽い気持ちから始まっていますし、少しの不便は仕方がないと思っています。

――ある程度の偏見を受け入れてるんですね。

てんてん 普通の社会で暮らす人と別の生き方をしていることを表現するために、タトゥーを入れている人もいますよね。

 たとえば、国会中継に映っている人たちみんなにタトゥーが入っているとちょっとイヤじゃないですか(笑)。

 わたしもこれだけタトゥーが入っているのに、たくさん入れている人を見たらちょっとビビりますし。偏見はある程度は残っていいと思います。

――今後やっていきたいことはありますか。

てんてん オリジナルのインクブランドを作ることが今の夢です。タトゥーにはかわいい色のインクが少ないんです。新しいことを生み出して、生きるきっかけを与える彫り師になっていきたいです。

©︎山元茂樹/文藝春秋
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