陽太郎「僕が前に出れば出るほどさくらの株も下がっちゃう気がしてきて…」

――陽太郎さんはさくらさんを支えるうえで、それまでの仕事のキャリアを犠牲にした部分もあると思うのですが、いわゆる「男のプライド」的な問題とどう折り合いをつけたのでしょうか?

陽太郎 実は結婚した当初は、「横峯さくらの夫」じゃなくてちゃんと僕自身の名前で存在感を出したいと思っていました。でも2年くらいで「あ、これは無理だ」って悟りました。横峯さくらという選手にはとうてい勝てないし、何より僕が前に出れば出るほどさくらの株も下がっちゃう気がしてきて。

 ツアー会場で「横峯さくらの結婚相手、失敗だよね」というギャラリーの会話が聞こえてくることもあり、僕自身が発信するのはやめて「横峯さくら」を家族で盛り立てていこうと切り替えました。今日はこんなに話してて矛盾しているんですが……。

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さくら 珍しいよね、こんなに話すの(笑)。でもだからこそ、夫の名前を憶えてくれる人はすごいねっていつも言っています。

――結婚時、苗字をどちらにするか迷ったりしましたか?

さくら そういえば悩みもしませんでしたね。今は戸籍が森川で、競技名は“横峯さくら”です。でも名前が変わってみたら、病院で名前を呼ばれても周囲に気づかれないし、いいこともたくさんありました。空港の搭乗口でスタッフさんに「頑張ってください!」って言ってもらえなくなったのはちょっと寂しいこともありますけど(笑)。

「『30歳くらいで引退して専業主婦に』と本気で思ってたんですよ」

――今でも出産を機に引退したり試合数をセーブする選手も多いですが、それほどの苦労をしながらゴルフを続けるのはなぜでしょう。

さくら 実は私も「30歳くらいで引退して専業主婦に」と本気で思ってたんですよ。小さい頃はゴルフを全然好きじゃなくて、流されてやっていた感じでしたし。まして子どもができた後もツアーを回るなんて考えたこともありませんでした。アメリカツアーに行ってなかったら、たぶん今は専業主婦をしていると思います。

 

――アメリカツアーがきっかけだったんですか?

さくら アメリカツアーの試合の時に、会場の近くのホテルである女子選手が夫と小さい子2人とご飯を食べてるのを見て「どういう状況?」ってびっくりしたんですよ。後から調べたら、アメリカツアーは託児所が用意されてるから家族と一緒に回れるんだ、とわかりました。それで周りを見たら、出産を経て復帰する選手もいれば、お腹が大きくてもプレーしている選手もいて、「ゴルフと家族って両立できるんだ」と。

――最近は日本ツアーでも託児所がある試合がちらほらありますね。

さくら 増えてはきたんですが、実際に使っている人はごく少数。だから私たちがこの生活をやめると、この文化自体が途絶えてしまう可能性もあると思うんです。でも国内女子ゴルフツアーに託児所が常設されれば、若い選手たちのキャリアの選択肢も広がると思うんですよね。