「言いたかないが、おトキの父上は大変怠けちょられる。呪う暇があったら働けっちゅうのはその通り。ここにおる皆、親御様はもともとお武家だが、商いを始めたり、役人になったりと、新しい仕事を始めちょられる。何かにならにゃ、野垂れ死ぬ時代になったけん、いつまでも武士を引きずっちょるわけにはいけんのだ」
9月29日より放送開始したNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の第1回で登場したこのセリフが、SNSで大きな話題を呼んだ。
高石あかりが演じる本作のヒロイン・松野トキのモデルは、怪談作家として知られるラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の妻・小泉セツ。そしてトキの父は、武士の時代が終わり近代化に大きく舵を切った明治8年の日本で、かつて松江藩の上級武士だった誇りを捨てきれない男だ。
職に就かずに明治維新や文明開化を呪い続け、一家を引き連れて丑の刻参りをする時代錯誤な父親に対し、娘トキの担任教師が放った痛烈な批判が冒頭のセリフだ。
「実の父をディスっておる(笑)」「粋なキャスティング」
このシーンが注目を集めた理由は、トキの父を演じる岡部たかし(53)と、それをディスる教師役の岡部ひろき(24)が実の親子だったからだ。
SNSでは「実の父をディスっておる(笑)」「粋なキャスティング」といったコメントが飛び交った。
「ディスられた父親」の岡部たかしは、現在53歳。朝ドラでは常連といえる俳優だ。
『ひよっこ』『なつぞら』『エール』への出演を経て、『ブギウギ』では「アホのおっちゃん」役、『虎に翼』ではヒロインの父親を演じ、朝ドラでの存在感を確立した。
『虎に翼』では帝国大学卒業後、帝都銀行に勤務するエリート銀行員という設定で、娘を温かく見守る理解ある父親を好演。特に寅子が法律の道に進むことを応援する姿は、明治時代の父親像とは一線を画す先進的な人物として描かれ、高い評価を得た。

