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剛力彩芽を選んだ男・前澤友作 ZOZO球団と「審美眼」のゆくえ

62億円でバスキアを買った経営者 その視線の行く先は

2018/07/29
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前澤友作とパウエル元国務長官の「ありがとう」

 暴言炎上でいえば、前澤にも有名なのがある。TwitterでZOZOタウンの送料について物申したユーザーに「ただで商品が届くと思うんじゃねぇよ。お前ん家まで汗水たらしてヤマトの宅配会社の人がわざわざ運んでくれてんだよ。お前みたいな感謝のない奴は二度と注文しなくていいわ」とツイートし、騒ぎになってお詫びする事態となる。

 しかし、である。取りようによっては、顧客そっちのけでの出入りの業者への気配りとも読める。米国国務長官だったコリン・パウエルは、駐車場係にも「ありがとう」と言うのを欠かさなかったと述べている。おかげで気を良くした駐車場係に、いつもいい場所にクルマを誘導してもらえていた。地位や身分にかまわずに感謝や気遣いをする、それは自分に跳ね返ってくるのだという(注2)。ちなみにナベツネは週刊朝日のインタビューでスクープを取る秘訣を聞かれて、十取材してもすぐには一つか二つしか書かないことと、政治家の「秘書や運転手とかお手伝いさんを大切にすることかな」と答えている。そうすることで他社の記者を出し抜く機会を秘書や運転手が作ってくれるのだと(注3)。

前澤友作が62億円で落札したバスキア作品 ©AFLO

 今のところ、最後にナベツネチェックをすり抜けて球界新規参入を果たしたのはDeNAである。そのDeNAは当初、「モバゲーベイスターズ」を名乗り、サービスの名を売る目論見であった。しかし、それをナベツネは拒む。

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「モバベーだかなんだか知らないけど」

 横浜DeNAベイスターズの球団社長だった池田純はホリエモンとの対談で、「あれはナベツネに感謝だね」と話をフラれて同意している。「あの人、センスがあるんですよね。『モバベーだかなんだか知らないけど』って、彼の言った言葉が新聞の一面にドーンと載ったんですよ」。そして「彼が『モバゲーは許さん。会社名じゃないと許さん』と」。もしモバゲーベイスターズになっていたら、今にしてみれば「恥ずかしいですよね」と振り返っている(注4)。

「怪盗ロワイヤル」などで隆盛を極めた「モバゲー」も、ネイティブアプリの時代に呑まれ、DeNAの主力事業でなくなる今にしてみれば、ナベツネの「会社名じゃないと許さん」は難癖のようでいて、正しい忠告であったわけだ。

読売巨人軍の本拠地 ©iStock.com

 さて、「#ZOZO球団」とハッシュタグをつけて球界参入の意思表明をした前澤は、秋に球界参入構想を発表するという。前澤からすれば、球団名を「ZOZO◯◯◯◯ズ」としたいところだろうが、モバゲーの事例をおもえば、ナベツネはそれを認めまい。そんなこんなも含め、果たしてメガネベストドレッサー賞に選ばれたこともあるナベツネの御眼鏡に、前澤はかなうか。

(注1)「62億円バスキア購入が導いたディカプリオ自宅への招待」週刊ダイヤモンド2017.4.1

(注2)「『ありがとう』と言わない人は“必ず失う”駐車場係がえこ贔屓する人しない人」PRESIDENTオンライン http://president.jp/articles/-/24808

(注3)「ナベツネ大いに吠える『24歳まで童貞だった、ワッハッハ』」週刊朝日2006.1.6-13

(注4)「ホリエモンが語る球団買収の裏側。『渡辺恒雄氏に挨拶に行けば……』」Number Web http://number.bunshun.jp/articles/-/829917

剛力彩芽を選んだ男・前澤友作 ZOZO球団と「審美眼」のゆくえ

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