一時は約500キログラムも体重があったとされるアメリカ人女性、マイラ・ロザレス。昨年2月、彼女は43歳という若さでこの世を去った。

 マイラが広く注目を集めたきっかけは、ある殺人事件の容疑者として報じられたことだった。社会の眼差しに翻弄され続けた女性の半生に迫る。(全2回の1回目/後編を読む)

全米を揺るがした“巨体容疑者”の衝撃告白とは? ©︎AFLO

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“体重500キロの殺人者”と呼ばれた女性

 2024年1月16日、マイラのFacebookページにこんな投稿が上がった。

「Facebookの友人の皆さん、こんにちは。私はマイラの夫です。マイラが2023年12月25日に入院したことをお知らせします。彼女は2024年1月3日に退院しました。

 

 妻が病気になって以来、私自身、仕事をしていないため、GoFundMe(寄付を募るサイト)にアカウントを設定しました。寄付金はどんな形であれ、医療費や様々な支払いにあてられます。皆さんの愛と支援に感謝します」

 Facebookには、目のパッチリした、髪の長いマイラの写真が掲載されている。ふくよかで大柄に見える。とは言っても、その姿からは、マイラが、かつて、1100ポンド(約500キログラム)もあるほど肥満体だったことは想像し難い。しかも、マイラはかつて、自身が甥を殺したと主張する殺人者でもあった。

 “ハーフ・トン・キラー(体重500キロの殺人者)”。それが、マイラが与えられたニックネームだった。

 マイラはなぜ“ハーフ・トン・キラー”と呼ばれるようになったのか?

2013年、米国の人気番組「The View」に出演したマイラ(右)。モニターには減量前の姿が映し出されている(Photo by Lou Rocco/Disney General Entertainment Content via Getty Images)

2歳半の甥を殺したと自首

 マイラの名前が米メディアに登場したのは、2008年3月に遡る。3月18日、メキシコ国境に近いテキサス州南部の街ラホヤに住むエリセオ・ロザレス・ジュニア(当時2歳半)が、呼吸困難と頭部負傷のため病院に搬送され、その後、亡くなるという出来事が起きた。

 警察が殺人罪の容疑で逮捕したのがマイラ(当時27歳)である。エリセオは、マイラの妹ジェイミー(当時20歳)の息子、つまり、マイラの甥だった。

 事件当日、何が起きたのか? 

 供述書によると、その朝、ジェイミーはエリセオを姉マイラに預けて外出した。しかし、2時間も経たないうちに、マイラから「エリセオがベッドの下に挟まって、頭が腫れている」と知らせる電話が来たという。マイラは捜査官に「エリセオを床から抱き上げようとした際に、右手が滑り、転んで、誤って潰してしまった」と供述した。

 幼児を押し潰して殺すという事件は全米に大きなショックを与えた。しかし、それ以上に人々を驚かせたのは、逮捕時に1000ポンド(約450キログラム)以上、ピーク時には1100ポンド(約500キログラム)近くあったというマイラの姿だった。

 メディアは、マイラのことを「世界で最も体重が重たい女性」とセンセーショナルに書き立てた。