「真犯人が別にいるのでは?」
マイラの容疑はキャピタル・マーダー・ケース(死刑に値するケース)とも報じられた。テキサス州は米国でも死刑執行数が多いことで知られ、死刑は致死量の薬物注射によって執行されている。
しかし、マイラは巨体である。通常の薬物量では彼女を致死させるのは困難と考えられたのだろう、処刑に当たり、十分量の薬物を与えられるのかという声もあがった。
「甥を殺してしまった、事故だった」と供述したマイラだが、マイラの弁護人のバルデスは疑いを持つ。マイラは本当に罪を犯しているのか? 検察側も疑問を持ち始めた。なぜなら、検死の結果、死因は、頭部への鈍器による殴打で、マイラの供述とは矛盾していたからだ。
エリセオの頭蓋骨の前額部と後部上部及び下部に複数の骨折が見つかった。また、約1か月前に発生したと推定される骨折も見つかった。
それは、以前から殴打が繰り返されていたことを示していた。虐待が日常的に行われていたことを物語っていたのである。
マイラは誰かを庇っているのではないか? そもそも、体重が1000ポンド(約450キログラム)もあって寝たきりだったマイラがベッドの端に行ったり、起き上がったりすることができたのか? そう思ったバルデスは、マイラの家を訪問したある時、聞いた。
「事故が起きた時のことを、ここで再現してくれないか? どうやってベッドの端に行き、どうやって起き上がったのか見せてほしい」
すると、マイラは再現することができず、泣き崩れたという。もう隠し切れないと思ったのだろう。何をか? それは、自身が妹のジェイミーを庇っているということだった。
実際には何が起きていたのか?
では、事件当日、本当はどんなことが起きていたのか? マイラはこう話している。
「ジェイミーは急いでいて、遅刻しそうな状況でした。エリセオはADD(注意欠陥多動性障害)と診断されていて、ジェイミーは手に負えないと感じていたのだと思います。彼女はエリセオに朝食を食べさせようとしたのですが、食べたがらなかったので、ヘアブラシで殴打し、寝かしつけたのです。
ジェイミーが出かけた後、エリセオは泣き始めました。いつもと違う種類の泣き声でした。電気をつけると、頭に小さなこぶがあるのが見えました。
私はジェイミーに電話をかけました。それが大きな間違いでした。救急車を呼ぶ代わりに、彼女に電話してしまったのです。どうしたらいいのか分からなかったのです」
結局、エリセオの死因は、朝食を食べないエリセオをジェイミーがヘアブラシで殴打したことにあった。しかし、マイラは妹を守るため、到着した救急隊に、自分のせいでエリセオが負傷したと述べたのである。
それにしても、なぜ、マイラはジェイミーを庇ったのか? その理由について、後に、マイラはABCテレビでこう話している。
